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    2020→2021 甘々キスブラで始まります♡

    第8回キスブラワンライ「年の瀬」からお読みいただけると、より楽しめると思います!

    #キスブラ
    kissBra

    『3・2・1……Happy New Year!!』

    おめでとう。
    今年もよろしく!

    タワー内のあちらこちらで新年を祝う声が聞こえてくる。

    「夜勤をしている者もいるというのに……はしゃぎすぎだ」
    けしからんと言わんばかりに眉間に皺を寄せたブラッドも、今夜はグラス片手に談話室で皆の輪から外れたところに佇んでいる。
    先ほどまで、ジェイやリリーと新年の挨拶を交わしていたが、二人もセクターのメンバーや教官仲間たちの元へと戻り楽しそうに酒を酌み交わしていた。
    ブラッドはサウスメンバーと挨拶を交わした後、持て余し気味のグラスを片手に皆の輪から抜けたところだった。
    狭い会場の中心では、お祭り騒ぎの大好きなディノが、2021の形をした眼鏡をかけ、人々の間を楽しそうに歩き回っているのが見え、苦笑と共に小さなため息を尽いた。
    「まったく……明日、いやもう今日か。任務がある者もいるだろうに」
    そう零すブラッドの口元は緩いカーブを描き、言葉とは反対に穏やかな表情でパーティー会場を見つめていた。
    一人壁の花に扮するブラッドを気にするオスカーの視線を感じたが、今夜くらいはオスカーも楽しむべきだと、敢えてその視線に気づかない振りをする。
    盛り上がっている会場を見回し、満足そうに頷いたブラッドは、グラスに残ったワインを飲み干し近くのテーブルに置くと、静かに談話室を後にして屋上庭園に向かった。


    「……今夜は冷えるな」
    近年まれに見ぬ寒気がやって来ると予報されていたが、そのとおりになったようだ。
    上着を持ってこなかったことを後悔しながら、ブラッドは庭園の奥へと足を進める。
    静かに佇む慰霊碑の前に辿り着きそこで膝まづいた。
    眠る先達に挨拶をしてから、昨年の無事と今年の安寧を願い、静かに祈りを捧げていると、ブラッドのいる方へと足音が聞こえてきた。
    その足音はブラッドから少し離れた場所で止まる。
    知った気配を感じたブラッドは、体勢を変えないまま、近づいて来た人物に振り向きもせずに声をかけた。
    「キース……」
    「お、どうしてわかった?」
    「足音で貴様だとわかる」
    「ふ~ん」
    だがキースはそれ以上話しかけてくるようなことはしなかった。代わりにブラッドに近寄り、片手に持った未開封の缶ビールを慰霊碑の前に置く。
    「おい……」
    「なんだよ、こいつらの中には酒好きだっているだろ? 新年の祝いだ~」
    「ふざけたことを……」
    「おっと、新年早々に小言はやめてくれ~」
    立ち上がったブラッドがキースの顔の前で不愉快そうな顔をするが、それを気にせずキースはブラッドの肩に腕を回し、慰霊碑から少し離れた場所のベンチに座るように促す。
    流石のブラッドもここで言い合いを始めようとは思わなかったのか、大人しくキースに従った。
    「去年はほんと、大変だったな~」
    「あぁ……だが、嬉しい事もあった」
    「そうだな」
    キースが夜空を見上げ、とても穏やかで落ち着いた横顔をブラッドに見せる。
    ブラッドがそれをじっと見つめているのをわかっているくせに、キースは胸ポケットから取り出した煙草を咥え火を点けると、美味そうに紫煙を吐き出した。
    「ここは……」
    「わ~ってるって。一本だけな」
    言葉を奪い取ったキースがブラッドに顔を向ける。
    その瞳があまりにも穏やかに自分を見つめるから、ブラッドの胸がドキリと鼓動を打つ。それでも視線をそらすことなくキースを見つめた。
    二人は瞬きも忘れじっと見つめ合う。
    「ふっ……」
    短くなった煙草の灰が落ちるのに合わせ、キースが口元を歪めた。
    咥えた煙草を携帯灰皿に捨て、ポケットにしまうと空いた手をブラッドの頬に滑らせる。
    「冷えてる」
    ブラッドとは違いキースは上着を羽織っていた。
    頬に滑らせたキースの手の温かさを感じ、見つめ合っている間は忘れていた寒さが、その言葉でブラッドの体の芯まで冷え切っていることを思い出させた。
    両手で頬を挟まれると、キースの掌から暖かさが伝わりブラッドを温める。
    徐々に近づいてきたキースの顔がブラッドに重なった。
    常ならばこんな場所で何をすると、拳を振るうところであったが、今夜はどうしてだかそんな気が起きなかった。
    それどころか、ちゅっちゅっと数度合わせた唇が離れると、少し物足りなさを感じてしまい、濡れた唇が冷気に冷やされブラッドは思わず身震いする。
    その様子を見たキースがブラッドの体を引き寄せた。
    「う~…ここで上着を脱いで、お前にかけてやれればいいんだがな~。如何せん、寒い」
    情けない声を上げるキースに、思わずブラッドは小さな笑い声をあげてしまう。
    「ふふっ…気にするな。俺は女じゃない」
    「だがな~今夜はマヂで冷える。おまえに風邪ひかせちゃ、あちこちに怒られちまうだろ?」
    「俺は、そんなに軟ではないぞ」
    そう言いはしたが、今夜は本当に冷える。
    早く暖かい室内に移動するべきだろうとはわかっているが、もう少しだけこの静かな場所でキースとこうしていたい。
    だからブラッドはキースの上着に手を伸ばし、おもむろに前を開く。
    「おいおい~、さみぃよ」
    情けない声を上げるキースを無視し、開いたキースの上着の内側に体を寄せると、キースの体に寄りかかる。
    「情けない事を言うな。こうすれば寒くないだろう」
    最後にキースの腕を持ち上げ自ら肩に回し、体を囲い込ませる。
    「ふぉっ?」
    おかしな悲鳴を上げたキースの落ち着かない手の動きが収まるまで、ブラッドはじっと動かずにいた。
    「お前は、暖かいな……」
    「あ~、けっこう酒飲んだからな」
    「こうして暖がとれるのならば、呑むのもあまり注意するのはやめようか?」
    最近は以前のような無茶な飲み方をしていないことを知っている。
    ディノが戻ってきて精神的にも安定した最近のキースは、時折ひどく大人で頼りがいがあるように感じる。
    「そりゃ~ありがたいがな~。お前に構われなくなるのは少し寂しい」
    「俺が構うと逃げていくくせに?」
    「だってよ~、お前は程々を知らないからな」
    「むっ……どういう意味だ」
    唇を尖らせキースに顔を向けたブラッドに唇を合わせ黙らせる。
    「それより…な。そろそろ中に入ろうぜ。お前の唇が冷たすぎだ」
    キースが懐に寄り添うブラッドの体を離し立ち上がる。
    「部屋いって、暖ったまろうぜ」
    「………ディノがいるだろ」
    「あいつは今夜は帰ってこないぞ~。朝まで遊ぶって張り切ってたからな」
    その様子が目に浮かび、思わず苦笑を浮かべるブラッド。
    「ディノの奴……ならば、お邪魔するとしようか」
    「そうこなくっちゃな~。今夜はお前も付き合えよ」
    とっておきの酒を用意してあると嬉しそうにキースは笑う。
    「司令へのあいさつ回りは明後日だから、まあいいだろう」
    「おっ、そうこなくちゃな~」
    「だが変なことはするなよ」
    釘を刺しておかないと、調子に乗ったキースが何をしでかすかわかったものではない。もうキースの部屋は一人部屋ではないのだ。
    「あ~ん? 変な事ってのは、こういうのか?」
    そう言ってニヤニヤと相好を崩したキースの手が、ブラッドの尻を掴み揉みしだく。
    「………ッッ!」
    不意打ちの接触に思わず息を呑み込むが、その手はブラッドを揶揄うだけで、性感を煽るようなものはなかった。
    だからブラッドもすぐに気を取り直し、自分の尻に触れるキースの手の甲を抓った。
    「いてっ」
    「行儀が悪い手に仕置きをした。だが、言い子にしていたらご褒美があるかもしれないぞ」
    「おぉっ?!」
    即座に引いていく手と、期待に瞳を煌めかせるキースを呆れた目でみたブラッドは、キースのネクタイを掴み耳元に唇を寄せる。
    「貴様の家も掃除したことだしな。司令への挨拶を終えたら綺麗なうちに行くぞ…」
    キースがゴクリと生唾を飲み込む。
    そのわかりやすい様子がブラッドの悪戯心をくすぐった。
    「お前が今夜いい子にできたら……ご褒美をやろう」
    コクコクと頷くキースの顎に指を滑らせすりすりと顎下を撫でる。期待に目元を染めるキースの様子が可愛くて思わず自ら唇を寄せ、ちゅっと吸い付きすぐに離す。
    何度もうなずくキースを尻目に、ブラッドは屋上庭園の出入り口へ向かうと、その後ろを我に返ったキースが小走りに近寄ってきて横に並び、二人は揃って屋上庭園を後にした。


    「おいブラッド~~。なんで…っ、こんなに寄ってくんだよ」
    キースの部屋に移動し飲み始めた二人。
    普段はキースがブラッドの体を触ろうする度に、ピシャリと掌で打たれるのだが、何故か今夜はブラッドがキースに擦り寄ってくる。
    立ち上がり物を取りに行くついでに、キースの耳元でそっと囁いていたり。キースに寄りかかり髪を優しく撫でたり、掌を合わせ指を絡ませたり。
    そのような不意打ちをされる度にキースの鼓動は跳ね上がる。いますぐ押し倒してしまいたい衝動に駆られるがそれをしては負けだ。
    「くそ~~っ、覚えていろよ!」
    手にした缶ビールを飲み干し、新しい缶のプルトップを開ける。それをゴクゴクと飲みながら煙草を手にして、ぷかぷかと煙を吹かせた。
    ブラッドに煽られ徐々に酒量が増えてきたキースを悪戯そうな顔で見たブラッドは、この様子なら、今夜は安全だと胸を撫で下ろしながら再び挑発的な言葉を口にする。
    「貴様が覚えていられたらな」
    二人とも酒で赤く頬を染めながら子気味良く会話を続ける。
    そんなブラッドの楽しそうな姿を見ながら、絶対に明後日は泣かせてやると、キースは心に誓いを立てたのだった。

    END
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    みぃ☆

    DONEご飯を食べるキスブラwebオンリーイベント『ふたりきりの四つ星レストラン』開催おめでとうございます!!
    沢山のキスブラで幸せいっぱいの空間。参加出来てとても嬉しいです♪

    今回はテーマどおり「ごはんを食べるキスブラ」です。
    お付き合いしているキスブラが同棲を始めました。そんな二人の朝の一コマ……。
    幸せな二人の『世界一の朝食』をお裾分けいたします♪
    世界一の朝ごはんブラッド・ビームスの朝は、寝起きの空腹を刺激する香りから始まる―とても幸せな目覚めだ。

    今朝はコーヒーの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、朝食は洋食だと知る。これが出汁の香りが漂う朝ならば和食だ。
    最近、朝食が和食か洋食かどちらになるか想像できるようになってしまったのだが、その理由を語るのは少しだけ恥ずかしい。
    「今日は……予想が外れたな」
     和食だと思っていたのだがと、小首を傾げる仕種は寝起きのせいもあり少々無防備だ。だが、こんなブラッドの表情を見ることができるのは、一緒に暮らしているキースだけなのだから引き締める必要はどこにもない。
     ふわふわのブランケットに顔を埋めれば、二人分の混じり合った匂いが香り、いつまでもぬくぬくと埋もれていたくなる。
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    みぃ☆

    DONE第8回キスブラワンドロライ
    お題は『年の瀬』でキースの家を大掃除する話。甘々キスブラ

    読み切りですが、続きっぽいものを1日と3日(R18)で書く予定。
    「今日こそはこの部屋を片付ける。貴様の家なのだからキリキリ働け」

    年の瀬が差し迫った12月のある晴れた日の朝。
    キースがまだベッドに懐いていると、部屋まで迎えに来たブラッドに首根っこを捕まえられ強引に引きずりだされた。
    ジュニアの「キースが暴君に攫われる~」という声をどこか遠くに聞きながら、車の後部座席に放り込まれる。車には既に掃除道具を積んであったようで、すべての積み込みが完了すると、ブラッドは急いで車を発進させたのだった。

    「まずはゴミを纏めるぞ」
    家に到着早々ブラッドは床に転がった酒瓶をダンボールに入れ宣言どおりに片付けを開始する。次に空き缶を袋に集めようとしたところで、のそのそとキースがキッチンに入ってきた。
    「やる気になったか」
    寝起きというよりもまだ寝ていたキースをそのまま連れ出したのだから、恰好は部屋着のスウェットのままだし、髪もあちこち跳ねてボサボサだ。
    「まずは顔でも洗ってシャキッとしてこい。その間に俺は……」
    ぼーと歩くキースは、無言のままブラッドの背後を通り越し冷蔵庫の扉を開ける。
    水と缶ビールばかりが詰め込まれた庫内が見え、ブラッドは呆れた溜息を尽く。
    「ま 3484

    みぃ☆

    DONE2020→2021 甘々キスブラで始まります♡

    第8回キスブラワンライ「年の瀬」からお読みいただけると、より楽しめると思います!
    『3・2・1……Happy New Year!!』

    おめでとう。
    今年もよろしく!

    タワー内のあちらこちらで新年を祝う声が聞こえてくる。

    「夜勤をしている者もいるというのに……はしゃぎすぎだ」
    けしからんと言わんばかりに眉間に皺を寄せたブラッドも、今夜はグラス片手に談話室で皆の輪から外れたところに佇んでいる。
    先ほどまで、ジェイやリリーと新年の挨拶を交わしていたが、二人もセクターのメンバーや教官仲間たちの元へと戻り楽しそうに酒を酌み交わしていた。
    ブラッドはサウスメンバーと挨拶を交わした後、持て余し気味のグラスを片手に皆の輪から抜けたところだった。
    狭い会場の中心では、お祭り騒ぎの大好きなディノが、2021の形をした眼鏡をかけ、人々の間を楽しそうに歩き回っているのが見え、苦笑と共に小さなため息を尽いた。
    「まったく……明日、いやもう今日か。任務がある者もいるだろうに」
    そう零すブラッドの口元は緩いカーブを描き、言葉とは反対に穏やかな表情でパーティー会場を見つめていた。
    一人壁の花に扮するブラッドを気にするオスカーの視線を感じたが、今夜くらいはオスカーも楽しむべきだと、敢えてその視 3894