Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    炉妻さとり

    @AM_10932

    @AM_10932

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    炉妻さとり

    ☆quiet follow

    ブラッドとアッシュ姉がお見合いする話。アッシュ姉の理想の男性像は某グッドルッキングガイの条件を参考にしました(重要)
    前半はオスカーとアッシュのみ登場です。
    後半はブラッド視点。読みにくかったらすみません。

    #オスブラ
    zebra

    シンデレラストーリーは一度だけでいい「オスカー!」
     オスカーがジムで日課のトレーニングに励んでいると、血相を変えたアッシュが飛び込んできた。
    「どうした、アッシュ。今日はもうスパーリングは――」
    「ちげぇよ! 親父から、俺の姉貴とブラッドが見合いした、このまま順調に進みそうだって連絡が来たんだ。お前は知ってんのか!?」
     オスカーの表情に驚きは見られなかった。だからどうした、とでも言いたげな表情に苛立ちが募っていく。彼女の性格からして、見合いをした時点で大事件なのだ。彼女はオルブライト家の人間らしく、自分にも他人にも求める基準が恐ろしく高かった。
     彼女の理想の男性像。まず身長185cm以上、年齢は18歳から28歳。容姿端麗であることは前提として、全身のバランス――彼女曰く『デザイン』が良いこと。彼女に尽くしてくれること、等々。
     結婚適齢期のオルブライト家の令嬢となると言い寄る者は後を絶たなかった。どんな年上の権力者も、上昇志向の強い青年実業家も、この条件を突きつけて全て跳ね除けてきたのが彼女だ。だがブラッドはほぼこの条件を満たしている。今度こそ彼女は本気かもしれない。
    「オスカー、うかうかしてらんねぇぞ。あいつは欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる。本気でブラッドを仕留めにくるぞ」
    「ブラッドさまは理想の男性ということか。さすがはブラッドさま……」
    「おい、状況分かってんのか!? テメェはブラッドと付き合ってるんだろ!? 俺の姉貴と結婚しちまうかもしれねぇんだぞ!」
     あまりにもずれた返答をするオスカーの肩を掴むが、力を込めてもオスカーはぴくりとも動かせなかった。オスカーは黙々とベンチプレスのウェイトを調整し始める。わかりにくいがわかりやすすぎる態度に思わず舌打ちが出た。
     アッシュから視線を逸らしたまま、オスカーが答える。
    「ブラッドさまにお見合いを勧めたのは俺だ」
    「は!?」
    「ブラッドさまのご両親はブラッドさまに家庭を持ってほしいらしい。以前ブラッドさまとビームス家に帰省した時、ご令嬢との見合い話があるから会ってみないかという話になったんだ。ブラッドさまは断ろうとしたが、俺が勧めた」
     オスカーの低音がただ事実だけを紡ぐ。
    「まさか、あいつの両親にはお前たちのことを言ってねぇのか?」
    「ブラッドさまはいずれ相応しい女性と結婚して、ビームス家を継ぐべきお方だ。俺のことを伝えてご両親を混乱させるべきじゃない」
    「お前……」
     ベンチプレスの調整はとっくに終わっているはずだが、オスカーは顔を上げなかった。
    「既に顔合わせは済んでいる。初めは楽なお茶会で、ということで俺も同席した。あちらは秘書の女性を連れていたな」
     珍しく饒舌に話す姿は自傷のようだ。飲みにでも連れ出すべきなのか? アッシュらしくない考えが浮かんだ。少なくともいつ人が来るかわからないトレーニングルームでする話ではなかった。
    「お姉さんはブラッドさまを気に入っているようだ。よくブラッドさまのことを聞かれたり、相談にのってくれと頼まれる」
    「……あの姉貴が?」
    「ああ。来月、また四人でお茶会をする予定だ。そういえば、その時にブラッドさまに贈り物をしたいから買い物に付き合って欲しいと頼まれた」
     彼女がそんな可愛らしいことをするだろうか? 本命相手にはそうなるということか? いつもの彼女のやり口なら、周りを固めて相手を逃げられない状況にしてから――まさか。
    「オスカー。その『お買い物』は秘書の女も来るのか?」
    「さぁ……来るんじゃないのか?」
     来ないな、とアッシュは確信を持った。
     オスカー・ベイル。身長193cm、25歳。ダビデ像にも例えられる肉体美。従者気質。――彼女の本命はこちらだ。
    『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』――馬が欲しくて将と戦う気なのか? 彼女らしいといえば彼女らしいが。
    「オスカー、今言ったことはブラッドには伝えてあるか?」
    「いいや。さすがに俺でもそんな無粋なことはしない」
    「今すぐ言ってこい」
    「でも……」
    「いいから行け! お前じゃ姉貴には敵わねぇよ!」
    「か、敵う?」
     やっと顔を上げたオスカーの表情は情けなく潤んでいた。やっぱり嫌なんじゃねぇか、と言いかけて、代わりに背中に蹴りを入れた。
    「当たってんじゃねぇよ! いつもみたいに避けろ!」
     納得がいかないと言う顔のオスカーを追い出し、アッシュはベンチプレスに腰掛けた。
    「危ねぇ……」
    『あら、プランAは失敗ね。次は――』
     姉の冷静な狩人の声が聞こえた気がした。


    ***


     眼鏡を外し、目頭を揉む。仕事に疲れたような仕草だが、今は趣味の読書の時間のはずだった。二、三行読んでは思考を飛ばし、はっとして本に戻るということを繰り返していた。落ち着こうとコーヒーカップを口に運ぶが、とっくに飲み干していたことを思い出す。白いカップの底で茶色の雫が乾ききっていた。
     全く集中できていない。――全てはオスカーのせいだ。ここ数週間、オスカーが俺に見合いを勧めてきたあの日から、俺達は冷戦状態にあった。ヒーローとして、メンターとしての職務に必要な業務連絡はするが、私的な会話は全くといっていいほど無かった。
     本当なら今日の休日もオスカーとゆっくり過ごすはずだった。毎回約束していたわけではないが、二人の休みが重なった時はいつもそうだった。郊外へのドライブ、部屋での映画鑑賞、アレキサンダーのゲージの大掃除……どれもささやかなものだが、二人で共有する時間が俺は好きだった。
     今、オスカーは部屋にいない。ただの日課のトレーニングでジムに行っているだけだ。それを知っていても、そんなに俺と顔を合わせたくないのかと疑ってしまう。一人で部屋に籠っているとよくない考えばかりが浮かんでくる。
     読書を諦め物思いに耽っていると、そっとメンタールームのドアが開いた。気配に振り向くと、巨体を縮こまらせ、伺うようなオスカーとばっちり目が合ってしまった。オスカーは俺が読書に集中していると思っていたのだろう。
     オスカーが帰ってきた。オスカーのルーティンなら、二時間は帰ってこないはずだ。そんなに考え込んでいたのかと時計を見るが、オスカーがジムに行ってからまだ三十分ほどしか経っていなかった。
    「どうした。入らないのか?」
     俺の不興を買ったと思ったのか、オスカーが慌てて部屋に入ってきた。それでもすぐに自分の部屋には行かず、ドアの前で立ち尽くしている。
    「その……」
     まるで窓を割ってしまった子供のようだ。俺から歩み寄ると、オスカーが後退り、すぐに入口のドアにぶつかった。
    「言いたいことがあるなら聞いてやる」
     これでは尋問だ。あれこれ考えていた不安を悟られないようにと、いつもより強い口調になっていることは自覚していた。
     床と俺を交互に見つめ、トレーニングウェアで手を拭き――やっとオスカーが口を開く。
    「ジムでアッシュに会って、アッシュのお姉さんのことをブラッドさまに話せと言われたんです」
    「アッシュに……?」
     元々説明が苦手なことに加え、萎縮しきって予防線を張り、脱線するオスカーの話を紐解いてやった。
     要するに、オルブライト嬢がオスカーに俺との仲を取り持ってほしいと持ちかけ、俺をだしにオスカーと親睦を深めようとした。そういうことらしい。
    「やってくれたな……」
     思わず漏れた呟きに、オスカーが身を縮こまらせる。お前のことではない、と声をかけてやる余裕はなかった。
     そもそもお互い本気の見合いではないのは承知の上だった。あれは初めての顔合わせの日、オスカー達が気を回し、二人きりでテーブルを囲んでいた時のことだ。どう穏便に見合いを断ろうかと考えていると、彼女の方から切り出してきた。
    『本当はお見合いなんてするつもりはなかった、という顔ね。私もよ。
     この歳で独身、仕事ばかりで男の影もないとなると親も心配みたいなの。時間稼ぎに付き合ってくださる?』
     同じく仕事ばかりで女の影もない、と親から思われている身としては思うところがあった。
     慣れているのか、彼女はスラスラと「時間稼ぎ」の条件を並べ立てた。期間は数ヶ月から半年。会うのは月に一度のお茶会で、いざというときの証人としてお互いにオスカーと秘書の女性を同伴させる。この関係を終わらせる時は彼女が一言「飽きた」と言えばいい。父親達はいつもの彼女のワガママだと思って諦めるだろう、と。
     オスカーにそれを伝えていなかったのは俺の落ち度だ。あの時はオスカーと喧嘩したばかりで気が立っていた。俺の見合いが上手く行きそうだと聞いて焦ればいい――そう考えていた。
     その後も意地を張ってオスカーと私的な連絡を絶った結果がこの状況だ。オルブライト嬢がどこまで読んでいたのか、彼女がいつからオスカーに狙いを定めていたのか、全く気付けなかった。全ては俺が冷静さを失っていたのが原因だ。
    「オスカー、彼女との買い物の約束は断れ」
    「なぜですか?」
     普段は俺に服従するくせに、こんなときばかり疑問を口にするのか。理不尽なこの感情はきっと嫉妬と呼ばれるものだろう。
    「お前はヒーローで顔が売れている。それがオルブライト家の令嬢と二人で仲良くショッピングをしていたとなれば、交際していると思われる可能性がある」
     間違いなく彼女は世間にそう思わせる。もしかするとそれ以上のことを仕掛けてくるかもしれない。
    「軽率な行いは慎め」
    「も、申し訳ございません……!」
     オスカーは体を九十度に折り曲げ謝罪した。思わずため息が漏れた。オスカーに、ではない。俺自身にだ。
     違う。こんな上司としてヒーローとしての叱責がしたかったわけじゃない。
    「オスカー。顔を上げてくれ」
    「はい……」
    「これはお前の恋人としてのお願いだ。俺以外の人間とデートして欲しくない。それが若い女性となるとなおさらだ」
    「デ、デート……!?」
     この様子だと自分がアプローチを受けていたことも気付いていなさそうだ。少しだけオルブライト嬢に同情するが、自分の胸の内からふつふつと暗い喜びが湧き上がってくるのを感じた。
     彼女にも、他の誰にでも、オスカーを譲る気はない。オスカーを見出したのは俺だ。シンデレラストーリーは一度だけでいい。
    「それとも、彼女に気があるのか? 俺より彼女がいいと言うなら止めないが」
    「そんな……! 俺にはブラッドさま以外ありえません!」
    「俺には見合いを勧めておいてそれを言うのか?」
     ぐ、と一瞬オスカーが言葉につまる。何かを振り切るように、オスカーが叫ぶ。
    「俺は、ブラッドさまに幸せになってほしいんです!」
     あの日もそうだった。俺に幸せになって欲しいから見合い話を受けるべきだ、自分では俺に相応しくないと――勝手に俺の幸せを決めつけた。
    「オスカー。お前はどうしたい?」
    「俺……ですか?」
     言葉に詰まり、固まってしまったオスカーを抱き寄せ、汗で湿った背中を撫でた。オスカーの匂いがする。しばらくそうしていると、おずおずとオスカーの腕が俺の背に回された。
    「俺を、俺だけをそばに置いてください。他の人のものにならないでください……」
     いつも、いつまでもそばに。ずっと捧げられ続けたささやかな願いは今更すぎて、笑ってしまいそうになる。
    「欲がないな。俺を自分のものにしたい、ぐらい言われるかと期待していた」
    「……いいんですか?」
    「いい。お前がいいんだ、オスカー」
     肩口が熱く濡れる。宥めるように頭を撫でてやると、苦しいほどに抱きしめられた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    hpel_hina

    PASTノースWebオンリー用の展示が間に合うかビミョーなので、昔のワンドロのレンアキをそっと貼っておきます。
    めっちゃ短いです。
    むしろTwitterの本垢が凍結中で、前のポイピクに自分では入れないことも判明したのでひとまず避難用の垢でテスト投稿というか…。
    凍るならレンくんに凍らされたかったです😇😇😇💢
    甘い言葉、とは?「……チョコ」
    「…………無理だ」
    「クッキー?」
    「見たくもない」
    「うう〜ん……。あっ、ゼリーは!?」
    「吐き気がする」
    「お前ら、何やってんだ?」
     トレーニングから戻り、珍しくノースのルーキー部屋に、というかレンの元に来客があったのか声が聞こえてくると、そっとドアを開けて覗いてみればレンのベッドには青い頭と赤い頭が並んでいた。
     ベッドの端に座り猫の表紙の本を手に目線を落としているレンと、そんなレンの顔を覗き込むようにして隣に座っているアキラ。この従兄弟同士がこんなに至近距離で話しているのもあまり見た事がなく、珍しい光景にガストはおもわず部屋に足を踏み入れる前に戸口から声を掛けていた。
     気付いたアキラは笑って「邪魔してるぜ〜」と手を振ってくる。が、その隣でこちらを見てくるレンの目は据わっている。どうやら邪魔をしてしまったのはこちららしい。
    2056