それは、ほんの気まぐれだった。
今日は本丸の大掃除の日で、倉庫の清掃を手伝うと言う名目を作り上げて普段大典太がいる倉庫に入ったのはいいけれど、肝心の想い人は誰かに呼ばれているのかこの倉庫にはいなかった。清掃を割り振っていた主からはここを大典太と掃除をするようにと言われているからいずれは帰ってくるだろうけれど、肩透かしを食らった気分だ。
残念気に吐いた息に水心子ははっ、と背筋を伸ばして首を振る。残念がっている場合ではない、一人でも掃除をするべきだと気を引き締めると手に持った雑巾とはたきをぎゅうと握りしめた。
「まずは、はたきだな」
水心子は脚立を探して辺りを見回した。悔しいけれど水心子の身長は刀剣男士の中では低い方である。童の姿をした短刀らを除けば前から数えた方が早いほど。己の姿は青年というより少年といっても差し支えないほどで、幼さを誤魔化すために口元を隠しても隠しきれてはいないようだった。
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