宗教なんてくだらない。神なんていない。そう信じていたかった。そう、信じていたかったから。
目隠しをしたちいさな子が首を傾げる。純粋無垢で、何も知らない、こんな小さな子が神さまとして閉じ込められているだけでもおかしいのに、今はABYSSなんて怪しい集団にも狙われている。やはりこの世界は狂っている。外の世界に出してやらなければならない。
颯馬が囮になってくれると言う。ならば自分が奏汰についていてやる側でなくては。
頑張って作った花畑を踏み荒らされたあげく奏汰を攫われ、地下水道にひっ捕らえられた少年は固く決意した。
攫いたいと言うのであれば攫わせてやろう。自分は囮に食いついた隙をついてやつらの船に密航してやる。颯馬にも作戦は伝えてある。てぇい、やぁ、と元気に刀を振り回す子供の声が合図だった。
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