その日、その船の献立はアジフライだった”主様”が楽しいことがすべてだった。
たとえ指をすべて切り落とされようと、体をめったうちのされようが・・・・”主様”が楽しければ、自分も楽しい。
”奴隷”とはそういうものだから。
死にかけた自分が打ち捨てられたとき、当たり前のことだが”自分”には何もなかった。
『・・・へぇ、生きてんのか。オマエ。』
切り落とされた指を拾い上げ、男はその金色の目を興味深めに細めた。
『ベポ。連れてこい。あぁ、指も拾ってこい何本戻せるか試してぇ。』
『アイアイ、キャプテン!』
『お前は、今日からアジだ。』
ぼろぼろの体に治療を施された後、初めての船長命令はその一言だった。
それから”自分”は、"アジ"と呼ばれることとなった。
9968