未だ夜明けは遠くパプニカ城の一室──
そこは暗黒闘気で負傷したヒュンケルと、氷山に生き埋めとなった事により凍死しかけたダイが休息している部屋だった。
その部屋へ訪れるのは彼らの仲間が中心ではあったが、傷の手当の為という理由でパプニカの三賢者のひとりであるエイミも頻繁に訪れていた。
今も彼女は、ヒュンケルの身体に新しい包帯を巻き直している所で、ダイは隣のベッド上で天井を見つめながら、二人の会話を聞いていた。
ヒュンケルの手当を終えると、彼女は立ち上がる。
「果物でも持って来ます」
そう言って、部屋を立ち去ろうとする彼女の言葉は、恐らくは半分以上、隣のベッドの彼に対して向けられたものだろうことを、ダイはなんとなく察していた。
だが、彼女に対する彼の態度が変わる様子もなく。
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