東の空が、薄桃色に染まっている。
朝が来る。出発の朝だ。そして、これが別れの朝になるかもしれない。
ウェドはテーブルの上に置いたままの航空券を見つめていた。テレビから聞こえてくるワールドニュースの声は、ただ不安の残った寂しい部屋を誤魔化すだけのものになっている。
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「大事な話があるんだ」
そう切り出したウェドの瞳は、いつになく自信なさげで、不安気に揺れていた。
かわいた唇を舌で舐め、無骨で長い指を組み、隣でオレンジジュースを飲んでいるテッドへ気まずげな視線を向ける。
「な…なに?突然……」
少しの沈黙。テッドはなんとなく居心地が悪くなり、手を膝の上で組んで背筋を伸ばす。
「…俺、来週の月曜スペインに帰る。ビザの更新があって…」
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