大魔道士の子守歌 大きな戦は終わったが、こいつの旅路は終わっていない。こいつの無二の相棒を見つけ出すまでは終わらない。ラグの上でゆっくりと深く眠るオレの弟子。オレの生涯最後の自慢の弟子。
月に数度、オレの弟子がオレのもとにやってくる。オレの知恵を借りるだけじゃない。深く眠りたいから、ラリホーマをかけてくれとやってくる。自分で自分にかけているうちに耐性がついてしまい、眠りが浅くなっているのだという。
年老いた師を頼ることへの申し訳なさを滲ませながら、しかし目的のためには師の力も借りるのはやむなしという思考がそこにはある。ダイを探すという事項は、こいつの中で他のあらゆる情よりも優先する。オレがこいつに頼られることに喜びを覚え、多少の無茶を厭わないこともこいつは知っている。そういう判断ができる弟子だから、こいつはオレの自慢の弟子なのだ。
ただひとつ、こいつが気づいていないことがある。オレの魔法力は最早こいつ本来の耐性には及ばない。しかし「師匠の呪文には抗えない」というこいつの意識が、こいつの持つ耐性を打ち崩している。そのことに気づいてくれるなと、オレはオレらしくなく祈っている。