勇者と魔法使いの正しい選択 洞穴に朝の太陽の光が差し込む。まぶしくておれは目を覚ます。身体を起こそうとしてみたけども、僅かな身動ぎが背一杯だった。思ったよりも回復が遅い。竜魔人として限界まで体を酷使して、黒の核晶の爆発を間近で浴びたんだから仕方ない。
でも回復したいとも思わなかった。此処が何処だかわからない。ポップはもういないし、みんながどうなったかもわからない。ポップがいないのならおれを探しだせる人だってきっといない。
そう、ポップはいないんだ。あの時、おれの目の前で消えていなくなった。黒の核晶の爆発で。
あの時、ようやく勝てたのに地上に戻れなくなることが哀しくて寂しくて涙も溢れてきて。だからおれはポップが一緒にいてくれるのが本当に嬉しくて。
ポップを助けたいという気持ちもあったんだ。もうこれ以上は誰も失いたくない気持ちがあったんだ。どうしようかと思ったら、ポップが「おまえとなら悪かねぇけどな」とまで言ってくれて。
そのままポップと一緒に飛び続けてしまった。本当はおれだけで充分だからおまえを蹴落としたりすればよかったのに。蹴落としたりしたら、ポップは「なんでだよ!」って怒ったかもしれないけども。もしポップが生きていたら、おれを助けに来てくれる。いつだってそうだ。おれが大変な時には来てくれた。時間がかかっても、必ず。
だけどポップはもう来ない。
爆発の瞬間、ポップは凄く嬉しそうな顔をしていた。光と共に消えていきながら満足そうな笑みを浮かべていた。もしかすると今、隣におれがいないことも不満に思っているかもしれない。ごめんよ、おれもすぐ一緒に逝けたらよかったのに。今のおれは皆と変わらない姿形だけど、頑丈な化け物だから。生き残ってしまったんだ。もう少しだけ待っててほしい。
そしておれは目を閉じる。今ある僅かな力を振り絞り、太陽の光に背を向けるために寝返りをうつ。そうだ、もう少し眠らなきゃいけない、回復しないといけないんだ。ポップのもとへ逝く為に、化け物を壊す力がおれにはまだ必要だ。