七草粥と運動「ええっと……せり、なずな? うーん」
指を折ってみるものの、二つ目からは進まない。仕方がないから手助けしてやる。
「ごぎょう、はこべら」
「ほとけのざ! すずなすずしろ……これで七草だ!」
自分の手柄かのごとく拳を天井に向けてガッツポーズをする先輩。俺が二つ助けてあげたのに。布団からはみ出た手を下ろさせて、掛け布団の中にしまってやる。寒いっての。
正月休みも、ご挨拶だらけの事務所行脚もようやく終わり、少しずつ日常に戻り始めた世の中だけど、振る舞われるおせち料理やおもてなしの品々に、さすがに胃も疲れてきた。
そんな話をしていたら、ベッドの中で先輩は思い出したかのように七草粥の話をし始めた。
「疲れた胃を休めるものなのだろう? 食べてみたい」
「草じゃん。特段美味しいものじゃないからね」
「うーん、そうかなぁ」
布団の中でモゾモゾとこちらに擦り寄ってくる先輩を腕の中に収める。食べた事が無いから。そういうけれど、所詮お粥だよ。
「あー。じゃあ、大根と大根の葉っぱで御粥作ってあげますよ。すずな。ほら、七草のひとつ」
「ふんふん、美味しそうだな」
「それだけだとお腹すいちゃうから、茶碗蒸しとか? 御節の蒲鉾残ってたからそれ入れよう」
今度は俺の足の間に、自分のを差し込んで絡めてきて、熱い体温が絡む。
「そう言えば冷蔵庫に魚の切り身が残っていたぞ」
「じゃあそれも焼いて……って、結構豪華になってる気がする」
「美味しいならいいじゃないか」
スリスリと足に擦り付けてきて……あんまり動くな。当たる。
「そう? 胸やけするくらいお正月の料理に飽きてたのに?」
「高峯のモノに胸やけなんてするわけないだろう」
腕の中からこちらを上目遣いで見てくる先輩は、童顔で愛らしい反面、どこか妖艶に見えるから不思議だ。
「高峯のは……全部食べられるぞ?」
スウェットから伝わる先輩の硬い筋肉質な足が、俺の内腿を撫でてくる。ナニをどこで食べる気? なんて聞くのは自分でもおっさん臭いと思ったから、言うのはやめた。
「まあ、あとは動けばいいか……」
妙に意識してしまい余計に下半身が膨張していくのがわかる。そんな俺の単純な下半身に気が付いた先輩は、足で膨らみ始めた俺自身を撫でだした。やめろ、バカ。育てるな。
「動くのは大事だな。なあ高峯」
じぃっと見つめてくる瞳が濡れて揺らめいて、まるで催眠術にでもかかったかのように引き寄せられてキスをした。
柔らかな唇に触れて何度も合わせると、乱れていく呼吸に余計に興奮する。
「運動、するか?」
そんなゴーサインに抗える訳もなく、先輩を組み敷いてスウェットを捲りあげ、手を突っ込む。
七草粥の話からなんでこうなったんだっけ?まあいいか。適度に運動しないとね。