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    natsubi_gbf

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    小ネタ。パーエル未満のテキスト。

    ##パーエル

    夜に--

    「また外に出ていたのか」
     エルモートが騎空艇の搭乗口から昇ってきたところに鉢合わせて、パーシヴァルは顔をしかめた。エルモートは薄く笑みを浮かべてみせる。それは構うなという威嚇なのかもしれない。
    「俺の勝手だろ」
     彼はそう告げると、ゆらりと廊下の向こうへ去っていく。薄暗い通路にランタンの灯りの軌跡が見えるようだった。
     夜の散歩はいつものこと。気づけばふらりと姿を消している。焚火を見つめて過ごし、気が済んだら戻ってくるのだ。エルモートも子供ではない。ことさらに心配するのはお節介だろう。ただ、彼はどうしても炎に惹かれずにはいられないのだと、時折それが気に掛かる。
     騎空艇が夜も航行を続けているときは、当然ながらエルモートは外に出られない。だが、その間に炎への欲求は強まるばかりだろう。
     彼がみずから騎空艇に留まっても良いと思うような、なにか鎹のようなものが必要だ。
     パーシヴァルは騎空艇の窓を見つめた。分厚いガラスは星を透かすことはなく、ただ暗い夜の色だけが映っている。
    (……夜に開く花でも買い与えれば、そのときくらい部屋に留まるだろうか)
     ふっと苦笑の混じった溜め息を零す。花など、一時の気休めにしかなるまい。
     それでも、と考える。花を贈られたエルモートはきっと驚くだろう。何が起きたのか分からないという間抜けな顔を晒すかもしれない。それを笑ってやるのも悪くない。
     パーシヴァルは花の名前を得るべく、書庫へと足を向けた。


    終わり
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