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    nayutanl

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    nayutanl

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    本当は今日の展示は一日の時間経過を追った連作になる予定でした
    故あって全部ボツにしましたが、一個サルベージしてきたのでふわっとご覧ください

    突然始まって続きそうな感じで終わります。続く予定だったんです…無念。

    ##中央主従

    ひねもすカイアサ《7時》 久しぶりの共寝も目覚めはあっさりとしたもので、二人とも睦合うのもそこそこにベッドから降りて身支度を始めた。
     ゆっくり過ごしたい気分ではあるのだが、揃って遅起きをするわけにもいかない。まだ少しばかり残る夢見心地を惜しむようにゆっくりと着替えながら、ふたりは顔を見合わせて面映ゆそうに笑みを浮かべた。
     
     身だしなみを整えて、互いに確認し合う。自分自身では見られないところを特に確認するのは、そのまま自分が気になる箇所だからだ。
     誰にも言ってはいない関係なので誰も知らないはずだが、何も言わなくても気づかれていることというのは不思議とひとつやふたつではない。相手への感情に後ろめたいことなどありはしなくとも、どちらかといえば他人には知られてない方がいい―おさまりの悪いところもある。しかし、おおっぴらに「つきあっています」だなんて言って回れるかといえばそんなことはまったくないので、こればかりは仕方ない。秘密。そういうことにしている。
     
     確認を終え、部屋の主であるカインがドアを開けて先に部屋から出ると、「きゃっ」と高い声と共に誰かにぶつかられた。朝一番にはたまにあるちょっとした事故だが、今朝は普段の朝とは違う。一瞬遅れて声のした方を見やれば、廊下にスノウが尻餅をついていた。
    「あいたたた……」
    「スノウ様! 怪我はないか!?」
    「大丈夫じゃ。受け身をとったからの」
     尻餅をついているのに受け身とはどういうことか分からないが、とにかく大丈夫らしい。
     スノウは傍らにいるのであろうホワイトの手を借りてよいしょと立ち上がると、二人一緒にカインの手に触れた。そうしているうちに、カインの後ろにいたアーサーも出てきてスノウとホワイトに朝の挨拶をする―。アーサーと同伴で部屋を出たことを除けば普段とそう変わりない朝だ。気を付けていたつもりでも片手落ちだったかもしれないとカインは内心焦っていたが、アーサーは動じているように見えないし、スノウとホワイトも特に気にしてはいなさそうなので、自分も気にするのをやめようかと思ったそのときだった。
    「ところで、どうしてカインの部屋からアーサーが出てくるのじゃ?」
     目を瞬かせながらスノウが言った。訊かれるかもしれないと予想していたことだが、一瞬でも気を抜いた自分の甘さを悔いながら、カインは答えようと口を開く。
    「あっ、あー……それは……」
    「スノウちゃん、それ本気で言ってるー? ボケるには早いでしょっ」
    「あいたっ! ホワイトちゃん、朝からどつき漫才はきついから~」
     咄嗟に言葉が出てこなかった時点で早々に諦めようと思ったカインだったが、ホワイトの出方の意図が読めない。助けてくれているのか、それともみなまで言うなということなのか、彼ら二人の調子は独特で時々乗るのが難しい。
     少し後ろでアーサーが「どうする」と耳打ちしてくるのに、様子を見ようと仕種で返してどうかわすか考えていると、ふとスノウが曖昧に振ってきた。
    「……とりあえず、天気予報でも聞く?」
    「何でそうなるんじゃ」
    「ぜひお願いします」
    「そうだな! 今日の過ごし方の参考になるし、頼む」
     これを好機と見たのか、アーサーはすんなりと頷いて笑みを浮かべてみせる。
     気まぐれかもしれなくても、もはやこの場の主導権を握っているのはスノウとホワイトといっても過言ではない。いまは作った流れに乗る場面だと判断し、カインもアーサーに続いて賛成を示した。
     すると、スノウがむむむと神妙な表情を浮かべ怪しい手つきで胸の前に円を描いた。占いをするときにもしばしば見せる動作なので、これで集中力を高めているのかもしれない。
     そして三人がそれを見守ること数秒、スノウが口を開いた。
    「空がにわかに曇ってまいりました……」
    「天気予報っていうか、天気実況じゃない?」
    「でも、どんどん曇ってきましたよ」
     窓の方を見ながら、ホワイトが少し呆れたような表情を浮かべる。確かに、部屋から出たときは朝日が射していた窓辺から見えるのは雲ばかりだった。
    「朝ごはんのいい匂いもしてきます……」
    「天気に関係なくないか?」
    「おなかが空いて頭が回らんのじゃ。以上、朝の天気予報でした~」
    「「ありがとうございます……?」」
    「ふたりともすまんのう。寝起きはちょいとポンコツなんじゃ」
    「昨日の夕ご飯から時間が経っておるからのう」
     唐突に始まり、そして呆気なく終わってしまった天気予報にカインとアーサーは戸惑ったが、曇ってきたことには違いないし、階下からいい匂いがしてくるのも事実だ。パンが焼ける匂いかスープの匂いか、断定はできないが朝の幸せな匂いに腹を減らした四人は誘われるように誰からともなく階下へ降り始めたのだった。
     
     
     《続》
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    nayutanl

    DONE月花Webオンリー展示
    年長者と強絆のゆるめの話です。
    アーサーの疑問から始まる四人のあれやこれやです。アーサーが外見年齢12~13歳くらいのイメージ。自分が絵で見たい話を書いた形かも。
    公式にない設定が一部ありますが、雰囲気でふんわり読んでください。書いた本人も雰囲気で押し切りました。
    9/9追記:追録書きました(https://poipiku.com/3138344/7470500.html)
    和やかな城 ある日の桜雲街、竜の住まう城の一室で青い目をした天狗の子どもが尋ねた。
     
    「スノウ様、ホワイト様。おふたりは大人なのにどうしてこのようなお姿なのですか?」
     
     この城でそのようなことを尋ねるのはこの子―アーサーだけであろう。スノウとホワイトは一度顔を見合わせてからふたりしてにっこり笑った。
     もう随分長く生きている彼らはこの城の主である。今でこそオズに譲るが強い力をもち、気が遠くなるほど昔からずっと竜族の頂点に君臨している。ここ近年は「早く隠居したい」が口癖で、どうにかオズかフィガロを後継者にしようとしているものの、ふたりにその意志はなく聞き流されてばかりだった。そんなものだから、このところはオズが助けて以来この城にホームステイしているアーサーが後継者になってくれたら……とオズに牽制をかけているが、本気ではないと思われているようである。とはいえ、アーサーが後継者に向いているという直感と竜の住まう城の主が天狗でよいかどうか、そしてアーサーの実家である天狗の一族の事情はそれぞれ別の問題なので、スノウもホワイトも食い下がったり押し付けようとしたりといったことはしない。ただ、隙さえあれば隠居したいと思っているだけで。
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    nayutanl

    DONE紫陽花見ながら話してるホワイトとフィガロの話
    ホワイトから見たスノウとフィガロのこととか、フィガロから見たホワイトのこととか
    ほんの少し生きた心地がしないけど、気のせいかと思うくらいのあったかさはある つもり
    あと、文末に話に関するちょっとしたことが書いてあります。
    ハイドランジアの幽霊師匠と植物園を散策―などといえば聞こえはいいが、実のところは連れ回しの刑である。フィガロは曇り空のもと美しく物憂げな色彩の花を咲かせるハイドランジアに目をやりながらこっそりとため息をついた。
    ホワイトがやってきて「ハイドランジアの花が見頃だから出掛けよう」と誘われたのだが、あまり良い予感がしなかったので一度は断ったのだ。断ったのだが、今回の誘いはこちらに選択権がないものだったらしい。有無を言わさず連れてこられてこのとおりである。

    「そなたら、また喧嘩したじゃろう」
    「喧嘩とはいえませんよ、あんなの」

    少し先をいっていたホワイトが戻ってきて、ごく自然に手を繋いできた。こんなことをしなくても今さら逃走なんてしないのにと思ったが、これは心配性なのではなくて物理的な束縛だ。都合の悪い話をするつもりなのであろうことは断った後の出方で何となく察していたが、切り出されるとやはり身構えてしまう。いいことでも悪いことでも、心に叩き込むようなやり方はホワイトの得意とするところなので、分かっていてもわずかに寒気がした。
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