刹那の花には願わない 桜雲街では毎月『七』がつく日は縁日なのだが、八月の七日は納涼祭となり大々的に祭を催すことになっている。通りには屋台が並び、広場にやぐらが立ち、山車が出る一年の間で最も盛り上がる七の市だ。
先月街に出て薬種問屋の若い衆と遊んでいたときに「一緒に見て回ろう」と誘われて、今日は昼前から街に来ている。
薬種問屋の店先で待ち合わせた四人は、まず普段と違う互いの装いを見て大いに盛り上がった。そうめかしこむ機会はないからか、非日常的な装いに気分が高揚してしまうのである。
「いい浴衣だね。着付けもとても綺麗で洗練されてる」
「ありがとう、ヒースクリフ。これはフィガロ様の御下がりで、城で着付けてもらってきたんだ」
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