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    nayutanl

    @nayutanl

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    nayutanl

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    これ https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=3138344&TD=5163364 から続く連作展示の予定だったものをサルベージしました。全部ボツにした理由は、カイアサオンリーの展示なのにカイアサ成分の薄いところがまあまあの分量存在すると思ったからです。この話もそんなかんじです。

    ##中央主従

    ひねもすカイアサ《10時》 朝方は曇っていたが、時間が経つにつれ晴れ間が出てきて訓練が始まる頃にはすっかり晴れた。曇りのち晴れだったようだ。
    「いい天気になってよかったです」
     アーサーの隣に座るリケは、何日ぶりになるかわからない四人揃っての訓練を喜んでいた。どうしても不在になりがちなアーサー本人と同じくらいこうして四人で訓練できる日を待ち望んでいて、日頃からどうにかならないかとオズに詰め寄ってはいい答えが返ってこないことにしょげていたが、望みが叶ったからか今日はすこぶる調子がいい。
    「アーサーは久しぶりの訓練になるもんな。あのまま雨になったら座学に……いや、オズが晴れにしてくれたかな」
    「どうだろう。でも、どんな訓練でも私は楽しみだったよ」
     アーサーは一国の王子であると同時にひとりの魔法使いでもある。まだ成長の途上ゆえ、訓練はできる限り欠かしたくないと以前言っていたのが思い出されるが、彼には自分達ほどの自由はない。
     彼の人生は彼のものであるが、そうではない側面もあるのだ。それは生まれによって決定づけられてしまっているものなので、現状の彼の立場などを考えれば勝手なことは言えない。歯がゆく感じることもあるが、仕方がない。
     言葉少なにしているオズも、カインの目からは今日はいつもより気遣わしげな指導をしているように見えた。具体的にどうと言葉にはし難いが、そういった感じがする。
     とにかく、自分を含めてみんながアーサーのいる今日の訓練を少なからず楽しみにしていたのだ。そのことが嬉しくなって、カインは覚えず笑みを浮かべた。
    「カイン、外での訓練になったのが嬉しいのですか?」
    「それもあるけど、こうしてみんな揃って訓練をやるのは久しぶりだろ? 嬉しくなっちまってさ」
    「僕も、やっとアーサー様と一緒に訓練ができて嬉しいです。アーサー様がいない日は、やっぱり寂しかったから……」
    「寂しい思いをさせてすまない、リケ。もう少し顔をみせられたらいいとは思っているのだが、なかなか上手くいかなくて」
     笑顔を見せながらも寂しかったという気持ちを隠さずにみせてしまうリケに、アーサーは申し訳なさそうにほほ笑み返す。しかたがないことなら皆知っていて分かってはいるのだが、ままならなさに感情が追いつかない日もある。
     そういうときに、大丈夫だという顔をしてやり過ごさないように気を付けようと若い魔法使いたち皆で話したことがあった。魔法は心で使うものだから自分の気持ちを自分で認めてあげようと聞いてからは、少し精神の持ちようが変わった気がしていた。
    「アーサー様が元気でいることが何よりです。会えない日も、そうお祈りしてきました」
    「ありがとう、リケ。私も離れていてもおまえを思っているよ」
     何にせよ、よかった。会えない間も皆元気でいてくれて、自分のことを待っていてくれて、思ってくれていて、そしてこうして変わらない様子で接してくれる。
    「……再開する」
    「はい、オズ様!」
    「よし! 昼までもうひと頑張りするか!」
    「カイン、あまり張り切りすぎないでください」
     特別なことではないかもしれなくても、いまの自分にとっては代わりのない、ありがたいことだ。アーサーは正午に向かって高くなる太陽に目をすがめ、屈託なく笑った。
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    Replies from the creator

    nayutanl

    DONE月花Webオンリー展示
    年長者と強絆のゆるめの話です。
    アーサーの疑問から始まる四人のあれやこれやです。アーサーが外見年齢12~13歳くらいのイメージ。自分が絵で見たい話を書いた形かも。
    公式にない設定が一部ありますが、雰囲気でふんわり読んでください。書いた本人も雰囲気で押し切りました。
    9/9追記:追録書きました(https://poipiku.com/3138344/7470500.html)
    和やかな城 ある日の桜雲街、竜の住まう城の一室で青い目をした天狗の子どもが尋ねた。
     
    「スノウ様、ホワイト様。おふたりは大人なのにどうしてこのようなお姿なのですか?」
     
     この城でそのようなことを尋ねるのはこの子―アーサーだけであろう。スノウとホワイトは一度顔を見合わせてからふたりしてにっこり笑った。
     もう随分長く生きている彼らはこの城の主である。今でこそオズに譲るが強い力をもち、気が遠くなるほど昔からずっと竜族の頂点に君臨している。ここ近年は「早く隠居したい」が口癖で、どうにかオズかフィガロを後継者にしようとしているものの、ふたりにその意志はなく聞き流されてばかりだった。そんなものだから、このところはオズが助けて以来この城にホームステイしているアーサーが後継者になってくれたら……とオズに牽制をかけているが、本気ではないと思われているようである。とはいえ、アーサーが後継者に向いているという直感と竜の住まう城の主が天狗でよいかどうか、そしてアーサーの実家である天狗の一族の事情はそれぞれ別の問題なので、スノウもホワイトも食い下がったり押し付けようとしたりといったことはしない。ただ、隙さえあれば隠居したいと思っているだけで。
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    nayutanl

    DONE紫陽花見ながら話してるホワイトとフィガロの話
    ホワイトから見たスノウとフィガロのこととか、フィガロから見たホワイトのこととか
    ほんの少し生きた心地がしないけど、気のせいかと思うくらいのあったかさはある つもり
    あと、文末に話に関するちょっとしたことが書いてあります。
    ハイドランジアの幽霊師匠と植物園を散策―などといえば聞こえはいいが、実のところは連れ回しの刑である。フィガロは曇り空のもと美しく物憂げな色彩の花を咲かせるハイドランジアに目をやりながらこっそりとため息をついた。
    ホワイトがやってきて「ハイドランジアの花が見頃だから出掛けよう」と誘われたのだが、あまり良い予感がしなかったので一度は断ったのだ。断ったのだが、今回の誘いはこちらに選択権がないものだったらしい。有無を言わさず連れてこられてこのとおりである。

    「そなたら、また喧嘩したじゃろう」
    「喧嘩とはいえませんよ、あんなの」

    少し先をいっていたホワイトが戻ってきて、ごく自然に手を繋いできた。こんなことをしなくても今さら逃走なんてしないのにと思ったが、これは心配性なのではなくて物理的な束縛だ。都合の悪い話をするつもりなのであろうことは断った後の出方で何となく察していたが、切り出されるとやはり身構えてしまう。いいことでも悪いことでも、心に叩き込むようなやり方はホワイトの得意とするところなので、分かっていてもわずかに寒気がした。
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