Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    srn_kbuc

    @srn_kbuc

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    srn_kbuc

    ☆quiet follow

    フォーマルな彼らのお話。柑橘さんへの誕生日プレゼントに書きました。ほかの方もぜひどうぞー

    #kbdn

    シーズンが、終わった。

    「よかった……」
    おととい、灼熱の決勝戦が行われたここ、シュートスタジアム。今日はユニフォームを脱いでおめかししたポケモントレーナーたちが、そのシーズンの功績を称え合う式典が行われる。これをもって、今シーズンは終了。試合はないが後夜祭のようなもので、それなりに大切なイベントだ。
    「よかったです」
    「いやぁ、本当によかった」
    なにがよかったかって? レンタルされたタキシードのサイズがピッタリ合っていることだ。もちろん試着はするんだけど、成長期真っ最中のオレさまはそれこそ文字どおりに毎日少しずつ大きくなっている。去年はキツキツ、一昨年はブカブカだった。一ヶ月前に衣装合わせなんて自殺行為だとローズ委員長に文句を言ったところ、衣装屋さんが気を利かせてくれたらしい。レナとヒトミもホッとした表情を浮かべている。
    「リハーサル開始までごゆっくり」
    「あぁ、サンキュ」
    顔を作って、髪型もしっかりキメて。あとはお呼びがかかるまでしばしの休憩だ。とはいえ、タキシードを汚したら大変だからおちおち食事もできない。とりあえず、
    「おー、ルリナ、今年もいい感じだなぁ」
    「本当に? ありがとう」
    こうやって次々と現れるジムリーダーとかジムトレーナー、チャレンジャーたちとお喋りするくらい。オフに入るとこんな機会もないし。
    「ダンデ見てない? ヘアメイクさんが探してるのよ」
    「ここには来てねぇなぁ」
    「また迷子かしら、ここ彼のホームなのに……ちょっと探してくるわ」
    美しいドレスに身を包んだルリナが、これまた美しく整えられた髪をなびかせながら控室をあとにする。キマッてんだからもう動き回らなくてもいいだろうに。でもそうやってドレスアップした状態での身のこなしは、さすがモデルといったところだ。

    それから控室のドアが開いては、チャンピオン見てませんか、の繰り返しを三回。
    「キバナ!」
    みんなの探し人の声がしたのは、リハーサルの開始が遅れています、との連絡が入ってから数分後のことだった。
    「探したぜ!」
    「それはみんなのセリフなんだよ、オマエどこにいたんだ?」
    「キミを探していたんだ、」
    部屋に入ってきたダンデは、しろがね色のタキシード。ガラルのみんなが楽しみにしている煌びやかな式典で、オマエだけが着ることを許されている色。それジュラルドンの色なのになぁ、意味わかんねぇよ、似合うけど。
    「オレさまを? なんで? ずっとここにいたけど」
    「そうだったのか」
    ゆっくりと立ち上がる。うん、今年のタキシードは本当にピッタリだ。こうして動いてもつっぱりもダブつきもない。
    「衣装屋さんから預かり物をしていたんだ」
    「ん?」
    「これを」
    ダンデの手から出てきたのは、濃い青と赤のポケットチーフ。言われてみれば、オレさまの胸元はどこか寂しげだ。
    「渡しそびれてしまったと言われたから、オレが届けようと思って」
    「……オマエに預けるとは、ホントにいい仕事するなぁ」
    頂点をずらして折られた、ナックルジムカラーのポケットチーフ。このままだと、ダンデの手の中でしわくちゃになってしまう。
    「さしてよ、ここに」
    「わかったぜ」
    ダンデの手が、オレの胸に触れる。ポケットに差し込んで、真面目な顔でその角度を整えて。……いつの間にか、こうして見下ろすようになってしまった。出会ったころは大して変わらない背丈だったと思う。別にダンデも小さくはないが、なんだかオレさまはこんなに大きくなってしまって。
    「ダンデ、……」
    まるで、この屈強な体を抱きしめるため、守るため、手に入れるためなのだと、言わんばかりに。

    「できた」
    ずいぶんと時間をかけて、スタイリスト・ダンデがようやく仕事を終えた。
    「ん、ありがと……どうした?」
    ダンデがオレさまをじっと見上げている。控室にジムリーダーたちがぞろぞろとやってきた。リハーサル開始はさらに遅れるらしい。あぁいたこんなところに、ルリナとネズの疲れた声。
    「い、いや、その……今日のキミは、か、かっこいいなと、思ったんだ……」
    そのしろがね色のタキシードは、ダンデの顔色を美しく映す。オマエは今日、本当に綺麗だよ。
    「……今日だけなの?」
    ゆっくり、首を横に振る。……あぁこれは、今日もらうどんな賞よりも光栄かも。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏✨✨😆💞✨✨✨✨✨❤💯🙏💖💯👏💕💗🍑💒☺💘💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    肴飯のポイ箱

    DONEお題「大きさ比べ」
    ⏳1時間ジャスト
    ワンドロ開催いつもありがとうございます!凄く楽しく創作できるのもこのワンドロのお陰です☺️
    ※息をするように同棲しているkbdn
    ※kbnさんって手が大きいよねっていう話です

    あの手だったら色々なものを掴めるし撫でられるし、凄いなって思います。細かな作業は苦手で折り紙とかチャレンジして「ぬぁー!」ってキレて欲しい気持ちもある。器用なんだろうけど。
    大きさ比べ「(…珍しい。)」

     リビングのソファで仰向けになりながら本を顔の上に伏せ、珍しく居眠りしている彼を見つけて、好奇心からそのダラリと垂れ下がった右手をまじまじと眺める。同じポケモントレーナーとして活躍する彼の手は、所々小さな傷やペンだこはあるが、綺麗に手入れがされており爪も全て丸く引っかかりも無く整えられている。眠り込んでいる彼を起こさないように静かに膝をつき、そうっとその手を自分の両手で包んで持ち上げた。手の甲から手のひらとの色味の違う境目を指先でなぞりながらキバナの手をひっくり返し、その大きな手のひらと自分の手のひらを合わせて大きさを比べる。
     この大きな手が、ダンデは大好きだ。この手で触れられると、不思議なことにとても安心して幸せな気持ちになる。こんなに触ってもキバナは未だに起きる様子はない。それを良いことに、ダンデはキバナの手のひらへ頬を擦り寄せて幸せそうに笑う。少し冷たい指先の温度が、ダンデの頬の温度に触れて馴染んでいく。そんな些細な事でも幸せで愛しい。そんな気持のまま、最後手を離す前にと思ってキバナの手のひらへキスをすると、途端ガバリと体を起こしたキバナにそのまま彼の長い両腕で抱き付かれ、胸元へと引き寄せられる。バサリと本が床に落ちる音と同時に、彼のシダーウッドの香水の香りがふわりと鼻をくすぐる。
    1341