20 黄金の風 思いも寄らない光景に、結晶の間にいた全員があっけにとられます。未来を予知するティラブロスですらも、予想外のことでした。彼には、自分が矢を手にする瞬間までしか見えていなかったのです。
これから一体何が始まり、どうなるのか――それは誰にも予想できません。
エンペラー・クリムゾンは、何かに抵抗するようにもがいています。
「馬鹿な……! 私が矢を手にしたのだ! この私がこの世の頂点なのだ!」エンペラー・クリムゾンは叫びました。「やめろ! お前だって知っているだろう! お前だって散々いい思いをしてきたはずだ!」
「ふざけるな! 味わわされたのは散々な思いだけだ!」
ネイサスは吐き捨てるように叫びました。
ティラブロスに取り憑かれたネイサスは、身体の自由を奪われながらも、十五年間の全てを観測し続けていました。
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