血に沈んだイヤリング 花城がベレッタを取り出す。しかしそれはギノがジャケットからそのまま標的を撃ったのと同時だった。男が倒れる。フルフェイスのヘルメットが割れて、幼い少年の死んだ目があらわになった。花城はその少年が動かないことを確認して、自分そのものといったイヤリングを取り返した。だが、それは血まみれで、つけられたものではなかった。
「花城、俺が」
銃撃で焼けたスーツを脱ぎながらギノが言った。花城は素直にイヤリングを差し出す。するとギノは上等に仕立てたスーツでそのイヤリングを拭き、上司に返す。どうせ捨ててしまうから、汚れてもいいというところなのだろう。
「ありがとう、つけていないと落ち着かなくて」
花城が言う。ひし形の赤い宝石がはめ込まれたイヤリングがまた、彼女の耳元を飾る。俺はそれを見て、俺たちを攻撃しようとした少年兵の血の色だ、と思った。彼女はそれを耳に飾っているのだと。きらきらと、光を受けて輝くそれを飾っているのだと。