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    ryuhi_k

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    ryuhi_k

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    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    伍の後の話

    前話「星を呑んだ 伍」→https://privatter.net/p/7702350
    後話「星呑み小話3・前」→https://poipiku.com/315554/4904736.html

    ##太陽地球
    ##星呑み

    星呑み小話5ごろごろと、飲み込めないものがいつまでも残り続けているような。
    他にどう表現したらよいのかも分からぬものが、睲壡とうえいと名乗ることにした妖の中で燻っていた。
    全てはうまくいった筈だ。己の主は幻を見ることなく――。

    『いや、あれは……どうなんだろうな……』

    己の本体である鏡が置かれた部屋から、庭を見る。赤い花が咲き誇る先に主の後ろ姿と、もう一つ何かがいる。何かは酷く曖昧で、人のように見えた次の瞬間には妖にしか見えない形になってしまう。鏡にすらそう映るのだから恐ろしい。
    主を想うのならば、引き離すべきなのだろう。けれども、それが主の隣に居て欲しいと願ったのは紛れもなく睲壡だ。同じように間近で星を見た男の声によって、主の目以外にも映ることとなった。
    その日から、主はとても幸せそうに笑う。長いこと焼け跡だった此処にも、ようやく鏡越しでなくとも屋敷があるようになった。
    全てはうまくいった筈だ。これでいい筈だ。分かっている。けれども、睲壡には飲み込めない。
    ――何かと主の姿が重なる。目を逸らした。ごろごろと、異物が燻っている。




    「――鏡、鏡、私の鏡」

    主の声に瞼を持ち上げる。いつの間にやら人型を畳んでいたらしい。自身の本体が主の手の中にあった。

    『若、どうかされましたか』
    「どうかしたのはお前の方では?返事をしないものだから、心配した」
    『……オレの心配なんざ、しなくていいんですよ』

    突き放すような声色に、言った側である睲壡の方が驚く。驚いたような、傷ついたような主の顔が己に映る。

    『申し訳ありません、オレは』
    「……」

    ごろごろ、ごろごろ。飲み込めないものの、正体は何か。鏡にすら映らない。

    「……いや、お前にそんな態度を取られるのも当然か」
    『若』
    「私はずっとお前に助けられていたのに……あの方ばかりに気をかけて……」
    『それは、当然で』
    「お前が寂しそうにしている、と言ってくれたのもあの方だった。私は何も気が付かなかった。私は……」

    鏡面が濡れる。

    『違う』

    睲壡が叫ぶ。

    「かが、」
    『オレは、若のそんな顔を映したいんじゃない。オレは……オレはただ……』

    名も意思も無き頃からあった、唯一のもの。
    名前と姿を借りた職人が、呪いのように願ったもの。

    『ただ、幸せに笑っていて欲しいだけなのに』

    鏡としても、妖としても、戥壡の軸はそれしかない。
    けれども、何かが飲み込めない。飲み込めないから、喜べない。ひびの入った鏡面の如く、歪みねじ曲がっている。

    「……私は、お前もいないと幸せにはなれないさ」

    それを聞いて、睲壡は「ああ」と自嘲した。
    お前だけだと、言われたかったのだと。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    手術的な描写有り・全体的に品はないのでご注意ください。
    墓石の上、二人でダンスを:2切り取ったものを丁寧に繋ぐ。沢山の素材から選りすぐった一番を、まるで最初からそうだったように。自分の身体が自分でなくなくなっていく感覚がするんだと、名前のない死体は言っていたらしい。誰にでもできる手法じゃなく、誰でも受け入れられる事態じゃない。でも俺はできるし、……コイツもまあ、適性があるんだろう。

    「あのさ」

    手を止めることなく、その先へ視線を向ける。俺の下で横たわって、首だけ持ち上げてこちらを見つめる緑の、淀んだ目。瞬きをする必要のないそれは、コイツの身体が生きていない証拠の一つだ。

    「視線がうるさいんだけど。目、閉じて」

    俺の言葉に、眉を顰めつつ目が閉じられる。そのまま首を降ろしたのを確認して、手元に集中する。鎖骨付近から肩にかけて切開し、筋組織を付け足し繋いでいく。欠損を補うわけではなく、ただ足すだけの生者にはやらない行為。やれたとしても……いや、やれる人間なんてこの国でも今は俺しかいない。その手元が気になるのは当然という思いもあるけれど、……普通だったら自分の身体を弄られているところなんて凝視するようなものじゃないだろうに。それ以外でも大体……いや全部コイツの視線はうるさいんだよな。
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