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    ryuhi_k

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    ryuhi_k

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    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    伍後の話前編

    前話「星呑み小話5」→https://poipiku.com/315554/5003774.html
    後話「星呑み小話11」→https://poipiku.com/315554/5540560.html

    ##海王星波
    ##木星旋回
    ##星呑み

    星呑み小話3・前目を閉じて、布団を被って丸くなる。
    伊呂波いろはは昔から、こうして嫌なことをやり過ごしてきた。大抵、そのまま眠ってしまえば何もなかったのと同じになる。
    けれど、今はどうだ。朝が来ても、何も変わりはしない。




    「なあ、逆方向じゃないのか」
    『合ってるから黙っとけ』

    遥か上空でそんなやり取りをするのは、旋葎せんり楓星ふうせいだ。二人は今、海へ向かって飛んでいた。

    『この辺りだな、降りるぞ』

    楓星が急降下してそのまま着地する。一言くれるだけマシだが、毎度乗り手のことをあまり考慮しないそれをどう改善させたものかと旋葎は頭が痛い。実際、一度空中に投げ出されている。それ以降声をかけてくるようになったが、速度を落とすという選択肢はどうもないらしい。

    「毎度お前は……。ああ、もしかしてこれか?」

    溜息を吐きつつ、辺りを見回した旋葎は、一つの祠を見つけて近寄る。

    『それだ。……おい、来たぞ、開けろ』

    楓星が祠に向かって叫ぶ。人の手程の扉が音もなく開いた。
    その隙間に、人型をとった楓星が腕を入れる。もう片方の手で旋葎を掴むと、そのまま二人の姿は祠に消えた。

    『ようこそ。楓星、旋葎さん』

    出迎えたのは、鯨湦けいしょうのみだった。
    此処は、数ある――海神として広く信仰されているため――鯨湦の家のひとつである。気まぐれな鯨湦は度々主たる住処を変えており、今は此処であった。

    「よう、……伊呂波は?」
    『奥に居ますよ。……今日も調子が悪いと言うので』
    「そうか。じゃあ、俺はそっちに行く。楓星、絶対に、ソイツをこっちに来させるなよ」

    念押しして、旋葎は我が物顔で廊下を歩いていった。
    その背中を見送った楓星は、既に不機嫌な顔をしている。

    『楓星、貴方というヒトは』
    『……お前に言われたくない。血の臭いが酷いぞ』
    『……』

    鯨湦は言い返さず、廊下を歩く。楓星もそれに続いた。
    ――鯨湦が旋葎達を呼んだのは、伊呂波が寝付いている所為であった。勿論病気や怪我をする筈がない。要は気の問題だ。しかし、その原因を伊呂波は頑なに話そうとしない。ならば、と呼ばれたのが旋葎と焼火やけひである。同じように生きる彼らにならば、話せることもあるだろう、と。




    「邪魔するぞ。……って何だこれは」

    襖を開けた旋葎が顔をしかめる。

    「旋葎、遅かったな。先に始めさせてもらっている」
    「始めるって、お前。今日はそういう集まりじゃないだろう」

    室内は酒気で満ちていた。焼火は上機嫌そうだが、伊呂波の方は旋葎に気づいているのかすら怪しい。
    とにかく室内に入り、伊呂波の隣に腰を下ろした。

    「伊呂波、大丈夫か」
    「あ、旋葎……。大丈夫、これ、美味しい」

    頬を赤く染めた伊呂波がそう言って盃を呷る。

    「どれだけ飲ませた。というか何で酒を?」
    「■■殿が、伊呂波はこうでもしないと俺達にすら口を割らないだろうと仰るのでな。こういう時にこそ、と思ってこれも持参した」

    焼火がそう言って軽く叩いた壺は、覗くと並々と酒が入っていた。つまりこれは、あの戦神が持っている「戦利品」のひとつなのだろう。
    手段はともかく、確かに正気の伊呂波では口を割らないだろうという見立ては正しい。それにしても飲ませすぎているが。

    「そうか。俺もとりあえず貰うかね」

    盃を受け取って、酒を呷る。確かに美味い。

    「神ってのはこういうモンをいくらでも飲めるのか。良い身分だ」
    「さあ……?■■殿は、使ったことがないと」
    「飲む口がなけりゃ使う必要もないか。宝の持ち腐れだったな」
    「なら、俺が、欲しいなあ」
    「伊呂波……。お前はそう強くないようだし、止めとけ」
    「強くなくても、美味しいから……。それに……」

    伊呂波の手から、盃が落ちる。

    「なんにも、考えなくていい……」
    「……何を考えたくないんだ、伊呂波」
    「鯨湦のこと……」
    「何かされたか?」
    「なにも。鯨湦は、俺には、優しいから……。俺には……俺にだけ……」
    「鯨湦殿は、伊呂波にだけ優しい?」
    「うん……」
    「まあ、最初からああだったしな……」

    鯨湦は、伊呂波を手に入れるために複数の村と街を押し流した。今はもうその土地に人は帰ってきているが、だからといってなかったことにはならない。

    「鯨湦は……召使いにも、家来にも、厳しいんだ……。俺には見えないようにしてるけど……ほんのちょっとしたことで、潰されて、殺されて……今日だって……」
    「……ああ、だからこの屋敷、血の臭いが酷いのだな」

    焼火が呟くが、旋葎にはあまりそれが分からない。潮の香りばかりがする。

    「怖い。怖いんだ。俺には優しい。それは揺るがない。変わらない。でも、怖い。優しいから、怖い」
    「今更だろ」
    「うん、分かってる。……でも、あの時からずっと、俺は鯨湦が怖いんだ……」

    伊呂波の指が盃を探す。けれども掴めず空を切るばかりだ。

    「伊呂波、もう飲むな。焼火、布団に突っ込め」
    「承知」

    焼火が伊呂波を手早く抱えて、奥の布団へ寝かせる。伊呂波は少し抵抗したが、かなり限界だったらしくすぐに目を閉じた。
    それを見届けた二人が卓に戻る。

    「全く……世話の焼ける」
    「しかしこれは……吐き出しただけではどうにもならないのでは」
    「そうだな……。よりによって、相手がアレじゃあな」

    人間らしい伊呂波を愛したのは、人間とは程遠い鯨湦だ。
    恐らく伊呂波の吐露したことを伝えたとて、鯨湦はきっと理解できない。

    「精々理解できるまで苦しめばいいさ。それがお似合いだ」

    旋葎は酒を呷る。焼火は曖昧に笑っている。

    「それに……伊呂波だって相当だろ。怖いとは言うが、嫌いだとはあれでも言わないんだからな」
    「ああ、確かに」

    伊呂波は起きたら、先ほど迄のことを覚えているだろうか。
    どちらにせよ、もう少し寄り添ってやらねばと二人は思うのであった。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    手術的な描写有り・全体的に品はないのでご注意ください。
    墓石の上、二人でダンスを:2切り取ったものを丁寧に繋ぐ。沢山の素材から選りすぐった一番を、まるで最初からそうだったように。自分の身体が自分でなくなくなっていく感覚がするんだと、名前のない死体は言っていたらしい。誰にでもできる手法じゃなく、誰でも受け入れられる事態じゃない。でも俺はできるし、……コイツもまあ、適性があるんだろう。

    「あのさ」

    手を止めることなく、その先へ視線を向ける。俺の下で横たわって、首だけ持ち上げてこちらを見つめる緑の、淀んだ目。瞬きをする必要のないそれは、コイツの身体が生きていない証拠の一つだ。

    「視線がうるさいんだけど。目、閉じて」

    俺の言葉に、眉を顰めつつ目が閉じられる。そのまま首を降ろしたのを確認して、手元に集中する。鎖骨付近から肩にかけて切開し、筋組織を付け足し繋いでいく。欠損を補うわけではなく、ただ足すだけの生者にはやらない行為。やれたとしても……いや、やれる人間なんてこの国でも今は俺しかいない。その手元が気になるのは当然という思いもあるけれど、……普通だったら自分の身体を弄られているところなんて凝視するようなものじゃないだろうに。それ以外でも大体……いや全部コイツの視線はうるさいんだよな。
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