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    ryuhi_k

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    ryuhi_k

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    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    肆のエピローグ的な話その2

    前話「星呑み小話:渡れぬ水が横たわる」→https://poipiku.com/315554/8478175.html
    後話「星を呑んだ 伍」→https://privatter.net/p/7702350

    ##木星旋回
    ##星呑み

    星呑み小話9「まだ険しい顔をしていますね」

    あきらの声に楓星ふうせいは「していない」とぶっきらぼうに返事をした。子供のような有様に、晶はこれ見よがしに溜息をつく。
    それを無視する楓星は、ただひたすら一点を睨んでいる。先にいるのは、旋葎せんり石動いするぎだ。

    『……なんであればかり気にかけるんだ』

    低い声で楓星が吐き出す。

    「数百年ぶりに死んだと思っていた親同然の存在と再会すれば、普通そうなると思いますが?」

    楓星は返事をしない。
    恐らく、楓星も全く理解していないわけではないのだろう。それでも、旋葎の全ては自分のものであり、他者に分け与える部分なぞないと考えているから不満が湧き上がってしまう。
    だとしても旋葎のあれは、嫉妬するのも馬鹿らしくなる程微笑ましいものではないか――と晶は思うが、口には出さない。出したら面倒が増えるだけだ。

    『普通なんて知るか』
    「それは……貴方からすればそうでしょうけれど。貴方だってあったのでは? 誰かと共に過ごしたことが」
    『……』

    そんなものはない、と一蹴しようとした楓星だが、何やら引っかかりがある。
    朧げな記憶だ。どれだけ昔のことかも分からない。それがどういう形をしていたのか判別がつかない。ただ、生意気だと思ったような気はする。それ以上は分からない。
    ……恐らく取るに足らないことなのだろう。その程度にしか他者と関わりを持たなかった。そもそも、自分以外を餌と敵以外に判別し始めたのは旋葎からの筈だ。

    『……とにかく、もう十分だろう』

    大股で旋葎と石動が座る縁側へ近づく。

    『おい』

    怒気を隠しきれていない声に、石動の顔が少し強ばる。無理もない、と晶は思う。幸運なのは、それが恐らく楓星には分からないということだ。

    「どうした?」

    対する旋葎は平常通りだ。
    今までの二人であったなら、ここですぐ言い合いでも始まっていただろう。それが無くなっただけ深まったのであろうが、完全に平穏にならないのがらしいとも言えなくはない。

    『……。別に、どうもしない、が』
    「へえ? の割には少し雷が出てるがな」

    この状態で笑えるのは旋葎ぐらいだろう。確かに楓星の髪は少し雷を含んで逆立っていたが。

    『お前……』
    「ああ、悪い悪い。……ほら、面白いだろ石動。コイツお前に妬いてるぞ」
    「他人を無闇に煽るのを止めろと昔から言っているだろう……」
    「記憶にないな」
    『……』

    ぎり、と楓星が石動を睨みつける。

    「まあ落ち着け。……良いことを教えてやるから」
    『何を……』
    「お前の話をしてた」
    『は?』
    「石動とは、お前の話をしてたんだよ。……お互いの空白期間の話をするとな、俺の場合殆どお前の話になるんだ」
    『……。……そうか』

    口が達者に育ったもんだ、と石動は思う。煽る癖を直す代わりに、こうして補うように育ったのだろう。あまりいい方法ではないが、今更どうしようもない。
    とにかく、張り詰めた空気が緩んだのは石動にはありがたい。

    「しかし座ってるのにも飽きたな。散歩でもしようか……楓星」

    旋葎が手を差し出す。

    『仕方ないな』

    その手を取るが否や、突風が吹いた。
    石動が思わず閉じた目を開ける頃には、二人の姿はもう何処かに消えていた。

    「……上手くやっている二人でしょう?」

    空いた場所に晶が座る。

    「まあ……そうかもしれないな」

    見上げた空には、鳥の影が小さく見えた。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    手術的な描写有り・全体的に品はないのでご注意ください。
    墓石の上、二人でダンスを:2切り取ったものを丁寧に繋ぐ。沢山の素材から選りすぐった一番を、まるで最初からそうだったように。自分の身体が自分でなくなくなっていく感覚がするんだと、名前のない死体は言っていたらしい。誰にでもできる手法じゃなく、誰でも受け入れられる事態じゃない。でも俺はできるし、……コイツもまあ、適性があるんだろう。

    「あのさ」

    手を止めることなく、その先へ視線を向ける。俺の下で横たわって、首だけ持ち上げてこちらを見つめる緑の、淀んだ目。瞬きをする必要のないそれは、コイツの身体が生きていない証拠の一つだ。

    「視線がうるさいんだけど。目、閉じて」

    俺の言葉に、眉を顰めつつ目が閉じられる。そのまま首を降ろしたのを確認して、手元に集中する。鎖骨付近から肩にかけて切開し、筋組織を付け足し繋いでいく。欠損を補うわけではなく、ただ足すだけの生者にはやらない行為。やれたとしても……いや、やれる人間なんてこの国でも今は俺しかいない。その手元が気になるのは当然という思いもあるけれど、……普通だったら自分の身体を弄られているところなんて凝視するようなものじゃないだろうに。それ以外でも大体……いや全部コイツの視線はうるさいんだよな。
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