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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    鍾魈短文、ハロウィンネタ

    #鍾魈
    Zhongxiao

    とりっくおあ…?「トリックオアトリート。お菓子をくれないといたずらをするぞ」
    「………………え、えぇと?」
     魈は困惑していた。魈の部屋の扉を叩く音がして、鍾離が訪れたのであれば出迎えねばと扉を開けたのだ。
     確かにそこには鍾離がいた。しかし、黒いマントを羽織り、手に籠を持った彼はよくわからない呪文を魈に投げ掛けたのである。
    「我は……その……」
     鍾離は魈の出方を伺っているようだ。なぜなら、鍾離はただ微笑んでいるだけで何の説明もせず、そればかりか何の動作もしなかったのだ。ならばと先程鍾離は何と言ったのか反芻してみる。とりっく……忘れてしまった。その後は菓子をくれと言っていた。さもなければいたずらをするぞ。と。
     鍾離のいたずらとは何だろうか。湯殿からあがったらいつもの衣服を隠され、やたらふわふわする着ぐるみのような睡衣を着せられた時のようなことを指すのか。それとも、共寝をした後抜け出そうとしたら、腕の力が強すぎて結局共に寝るしかなかったような事か……そもそもそれはいたずらなのか。不明点が多いように思う。
     魈の部屋には菓子を常に置いてはいない。下に行けば言笑が杏仁豆腐を作ってくれる上に、そもそも魈に菓子など不要だ。つまり、鍾離に差し出す菓子がない。
    「いたずらをしても良いということか?」
    「は……えっと……」
     どうぞ。とも言えず、魈は口を噤んだ。
    「生憎、鍾離様へ献上する菓子を持っておらず……」
    「では、いたずらをしよう」
    「菓子は、ありませんが……我を差し出すことはできます」
     それで許されるのかはわからなかったが、今出せるものを伝えてみた。
    「ほう。俺からのいたずらは嫌だと言うことか?」
    「いえ、そういう訳ではなく……」
     どうすれば良いのだ。
     魈には正解がわからない。鍾離がいたずらをしたいのならそうすれば良いし、菓子が欲しいのなら後日でも持参する。鍾離がどうして欲しいのかが、わからないのだ。
     あまりに悩んでいる姿が目に入ったのか、長過ぎる沈黙に助け舟を出してくれたのか、ようやく鍾離が表情を変えた。
    「はは。ひとまず、部屋に入っても良いか?」
    「それは、もちろん……お入りください」
     きっと説明をしてくれる気になったのだろう。魈が道を開けると、鍾離が中へ入ってくる。椅子へと腰掛けた後、今日はハロウィンと言う日なのだと教えて貰えた。
    「元々は死者の魂が彷徨う日と言われていたが、近年ではその意味も薄い」
    「……なるほど」
    「最早ただの催し事をする日という認識の方が大きいかもしれない。下の露台でも催し事をしていてな。俺も菓子をいくつかもらったんだ。お前も知っているかと思って聞いてみたのだが、その様子では知らないようだったな」
    「はい……。確かに下がいつもより騒がしい気はしていましたが……そのような日であるとは知らず……菓子を渡さぬとどうなるのでしょうか?」
    「扉に卵を投げつけたりするらしいが、降魔大聖の部屋の扉にそれをするのは些か罰当たりだな」
    「では、鍾離様は……」
     一体どういうイタズラを……? と聞き掛けて、そこで鍾離がやけに近い距離に立っていることに気付いた。
    「どうしていたと思う?」
    「我には……わから……」
     ゆっくりと鍾離の影が魈を襲う。気付けば口を塞がれていた。食むように何度も啄まれ、それだけで身体の力が抜けそうになる。
    「では、わかるように俺が教えてやろう」
     石珀の瞳が怪しく光ったように見えた。魈は寝台へと連れて行かれ、朝まで鍾離の言うイタズラというイタズラをたっぷりと教えられたのであった。
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