いつかはおかえりも、ただいまも「魈、俺と伴侶の契りを交わしてくれないか」
「……鍾離様、それは我に向けて言ったのですか?」
「この場にお前以外の奴がいると思うか?」
「いえ……」
魈は困惑していた。伴侶の契りとは何だと一瞬の内に脳内でよくよく考えたが、伴侶は伴侶でしかなくそれ以上でも以下でもない。
「無理にとは言わない。嫌ならきっぱり断ってくれ。そうすれば俺も諦めがつく」
「嫌では、ありませんが……」
無理ではない。嫌でもない。鍾離が魈に対して、遠慮など一切しなくていいとは思っている。先日恋仲になって欲しいと言われた時も、自分で良ければと引き受けたのは記憶に新しい。
「答えは今日出さなくてもいい。だが俺の気持ちを知っていて欲しかった」
恋仲であれば、鍾離の気が済んだ後に解消されることもあるだろう。しかし伴侶となれば話は別だ。鍾離の伴侶が自分などに務まるだろうか。もちろんずっと敬愛していたのは確かである。しかし、鍾離に対する自分の気持ちなど、考えたことがなかったのだ。
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