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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    鍾魈短文「ピロートーク」

    #鍾魈
    Zhongxiao

    ピロートーク「しょ、りさまは……我の、どこを……好いてらっしゃるのでしょうか」
     あまりに自信なさげに揺れ零れていく儚い金木犀のような瞳が愛しくて、その口を塞いだ。それでもまだ、伝わってはいないのだろう。
     何度夜を重ねても、朝を共に迎えても、彼の疑問は中々解消されないようだ。俺がいくら好いていると愛を伝えて行動で示しても、未だに恋仲であるということにどこか後ろめたさを持っていることがわかる。思考が溶けた頃に愛の言葉を伝えたところ、冒頭のような疑問が返ってきたのである。
     散々啼かせてしまったせいもあり、魈は今、隣で泥のように眠っている。俺の方に身体を向けて小さい吐息を漏らして呼吸をしているその姿からは、とても二千年以上の時を生きた夜叉には見えない。まろい頬を撫で、顔に掛かっている深い緑色の髪をかきあげ耳に掛ける。新緑色のキラキラ光る髪色を美しいと思いながら、指にくるくると巻き付けて遊んだ。
    「殺戮しか脳が無い、か」
     何かにつけて魈が言う台詞だ。そんなことは全くないのだが、魈の思考を塗り替えるにはまだ時間が足りないらしい。元々は無邪気で優しい性格だったと聞いたが、それは是非見てみたいものだ。
    「まぁ、お前は今でも優しいがな」
     何の手入れもされていないであろう薄い唇を親指で撫でつけ、口付ける。お前が眠っている間に、こうして何度も口付けしていることを知っているのだろうか。枕と頭の間に腕を入れ自分の肩に抱き寄せ、密かに腕枕をして楽しんでいることを知っているか。
     朝目覚めるとお前はいつも驚いて飛び起きてしまうから、わざと先に起きて別室で茶の用意をし、ゆっくり眠りにつけるようにしていることは、まぁ、知らなくてもいい。
     実は、俺の方がお前に付き合わせているだけではないか。
     そう思うこともある。口に出せば即座にお前は否定するのだろう。俺はただボロボロだった夜叉を助け、名前をつけ、生きる道を与えただけだ。盲目的に俺のことを信じすぎてはいないか。もし、助けたのが自分と違う誰かだったとしたら、お前は別の誰かのことを好いていたのではないか。そんなことを思わなくもない。まぁ、離す気は毛頭ないのだが。
     面白かったことを共有したくて話をしていると、話の内容はわからずとも耳を傾けてくれる。その後にポツリポツリと感想を述べてくれる。その時間が愛おしい。連れ立って歩くと、時間の流れがゆったりとしているのに、いざ別れの時間になると瞬きの間に感じる。もっと一緒の時を過ごしていたくなる。このまま別れの時が来なければいいとすら思ってしまう。
     表情や生き方、真面目な性格、意外と頑固なところ。どれも好いてはいるのだが、言葉で言い表すのは難しい。
     そうだな、いっそ半日くらい時間を掛けて滾々と説明しても良いのだが、お前の方がさっさと音を上げ、すぐに顔が赤くなってその場を去ろうとする姿が目に浮かぶ。その姿も愛らしくて、腕の中へ閉じ込めたくなる。
     今度、逆に聞いてみようか。お前は俺のどこが好きなのか? と。お前の反応が見てみたい。
    「俺達は不器用だな。だが、それも面白い」
     ようやく誰にも邪魔されずに手にできるところまで来たのだ。お前が心のままに俺に我儘を言い、無邪気に笑ってくれる日が来ればいいと思うが、別に来なくても今のままのお前を好いていることは、わかって欲しいところでもあった。

    「愛しているぞ、魈」
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