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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    sayuta38

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    鍾魈短文「豆まき」
    恵方巻き食べたり豆まきしたりするしょしょ

    #鍾魈
    Zhongxiao

    豆まき 留雲真君……もとい、閑雲が璃月港に住むようになってから、ますます鍾離が望舒旅館へ来る回数が多くなった気がする。近所に旧友が住むことになり、顔を合わせる機会や共に食事をする回数が増えたそうだ。港にいる弟子達を遠くから見守っていたり、時には手を貸している姿をよく見かけると望舒旅館に来る度に鍾離はそのような話をしてくれる。
    「鍾離様、最近は往生堂の仕事も落ち着いていらっしゃるのですか?」
    「そうでもない。毎日のように堂主から頼まれごとがあり、何かしら仕事はしている」
    「では……なぜ鍾離様は最近よく望舒旅館にいらっしゃるのでしょうか……?」
     少し前までは魈がいない時に鍾離が望舒旅館に来ていようが、特に自分に用事がある訳ではないと思い気に留めていなかったが、最近はその頻度から明らかに魈に会いに来ている気がしてならない。あまり不在にしているのも気が悪いかと思い、降魔が忙しくなければ一旦望舒旅館へ帰り、鍾離を迎えるようにしている。
    「ふむ。俺もお前に会いたくなっただけで、特に理由はないのだが……」
    「さようでございましたか……無粋な質問をしてすみません」
    「しかし、今日は用があるぞ」
    「あっ、そ、そうなのですね。一体どのような用でしょうか」
     用がなくても自分に会いに来る鍾離の行動に始めは困惑していたが、特に用がなく顔が見たかったという、なんとも恥ずかしい理由を最近やっと納得できたところだ。しかし、今日は用があるということで、一体どのような要件で鍾離は訪れたのかと少しばかり心が踊ってしまった。
    「稲妻の商人が来ていてな。なんでも稲妻では、今日とある方角を見ながら恵方巻きを食べ、豆を撒く日だそうだ。面白そうだったので恵方巻きと豆を買ってみたが、一人で行うよりは、魈と共にしたいと思ってな」
    「なぜ、豆を撒くのでしょうか?」
    「邪を払い、福を呼ぶ効果があるそうだ」
    「邪なら、我が払ってきますが……」
    「ふ、はは。それもそうだな。こういうのは気持ちの方が大事だ。稲妻では家族の誰かが鬼の面を被って、その者に豆をぶつける風習もあるらしいぞ」
    「……では、我が儺面を被りますので、鍾離様は我に存分に豆をぶつけていただくということであっておりますか?」
    「あっていない。お前にそのようなことはさせたくないな。架空の邪を払い、この望舒旅館に福を呼び込む儀式を行おう」
    「は、はぁ……承知しました」
    「まずは食事にしよう。茶を淹れたいので部屋に行っても良いか?」
    「もちろんです。湯をもらってきます」
     言笑に湯をもらい、魈の部屋で茶を淹れてもらった。テーブルの上に置かれた恵方巻きは、これを口に入れるのかと思う程に太いように見えた上に、結構長さもある。二本入っていたので一つずつ食べるのであると思われたが、果たして食べ切れるのだろうかと言う疑問も湧いた。
    「鍾離様、こちらの恵方巻きも食べやすい大きさに切ってもらってきます」
    「ああ、それなのだが、これはそのまま切らずに食べるそうだ」
    「切らずに……?」
    「切ってしまうと縁や福が逃げてしまうらしい」
    「さようで……」
     そんなものは迷信であるとわかる。鍾離もわかっているのだろうが、敢えて凡人の習慣に倣っているのだろうと思った。
    「では食べよう。東北東を向いて黙って食べるそうだ。これもまた、途中で話をしてしまうと福が逃げてしまうようなので、ここからは話さずに食べることに集中しよう」
     福とは無縁の存在ではあるが、これは鍾離と異国の行事に触れるということに意味がある気がした。
    「承知しました」
     椅子に腰掛け、鍾離と同じ方角を向いて恵方巻きにかじりついた。頑張って口を広げなければ一口で食べることは出来なさそうだ。これは端から少しずつ齧っても良いのかというう疑問も湧いたが、もう食べ始めているため質問することはできない。
     窓の外を見ながら賢明に口を動かして食していく。色々な具材が入っているが、味は悪くない。ただ具材がこぼれ落ちそうで、食べづらいなとは思う。視界の端に鍾離が真剣に恵方巻きを食べているのが見える。確かにこれを璃月の邸宅で一人食べているのは、些か寂しさも感じるような気もした。近くにいるのだから閑雲とこれを食べても良いだろうと思うのだが、鍾離は魈と食べたいとわざわざ訪れてくれたことに、心が温かくなる。
     ……頑張って食べてはいるのだが、鍾離の方が早く食べ終わってしまった。じっと鍾離がこちらを見ているのが見える。鍾離は食べ終わったので何か口を開いても良さそうだが、黙ってこちらを見ている。少し居た堪れないので早く食べ終わりたいのだが、まだ半分より少し食べたところである。口の水分も少なくなってきたので茶も飲みたくなってきた。恵方巻きを一旦置いて茶を飲むことは作法として大丈夫なのかもよくわからない。直接鍾離の脳内に質問するのはどうだろう。それも福が逃げてしまいこの場を台無しにしてしまうかもしれない。とにかく頑張ってこの太さのあるものを口に入れてしまわなければ。という気概で、なんとか食べ終えた。
    「……食べ終わりました」
    「そのようだな。茶を飲み少し胃を落ち着かせたら、豆を撒きに行こう」
     鍾離の淹れてくれた温かい茶を飲み、ほっと息を吐く。稲妻の凡人はこのようなものを食しているのかと、また新たな知識が増えた。
     その後、望舒旅館の皆が寝静まった頃に『鬼は外、福は内』という謎の呪文を鍾離と唱えながら、豆を撒いて回った。妖魔が現れれば魈が滅しに行くので茶番といえば茶番ではあるが、凡人に細やかな福でも訪れれば、それは良いことだと思った。
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    yahiro_69

    DONE魈生誕祭!の鍾魈なのに主に喋っているのは旅人とパイモンです。なんでだろう「鍾離先生、この後帰離原の方まで行くけどついでにいつもの薬届けてこようか?」

    頼んでいた清心の束を受け取って鍾離はひとつ瞬いた。
    旅人たちには時折、荻花洲にある旅館まで使いを頼む時がある。
    かの旅館に住まう少年仙人へ、凡人には作り得ない薬を届けてもらっているのだ。
    そういえば前に頼んだのはいつだったかとカレンダーを見て気がついた。

    「そうだな……少し待ってもらえるか? 一緒に手紙を書いておこうと思ってな」
    「いいけど珍しいね。ちょっとの用なら伝言するけど」

    旅人とパイモンが揃って首を傾げるのが面白くて、ふふと笑みながらカレンダーを指す。

    「いや何、今日はあの子の生誕の日だったということを思い出してな。祝いの言葉でも添えておこうかと」
    「えぇっ魈の誕生日なのか!? うーん、それならオイラたちもプレゼントを持っていくか?」
    「というか鍾離先生が直接持っていくほうが良いんじゃないかなあ。いつも先生のこと気にしてるし」

    今度は揃って別の方向に首を傾げている。
    本当にこの異邦人たちは見ていて飽きないものだと鍾離は機嫌よく筆と便箋を手元に寄せた。

    「いや、あの子はあれでいてお前たちのこ 1783