「にーる」
子供特有の舌足らずな喋り方で発せられたコマンドは、僕の中に深く眠っている何かを小さくノックした。それを感じたのはコマンドを発した彼も同じだったようで、その小さな口が開かれる様子をスローモーション映像を見るように眺めていた。
学生時代の思い出は何ですかと聞かれたら「セックスを沢山しました」と答えることしかできない。
仕事人間だった両親は僕を放置して出張に出ることが多く、近所に住んでいた一つ上のお兄さんが僕の家に来て相手をしてくれることが多かった。ママには内緒だぞと教えてもらった「ドムサブごっこ」は僕のまだ小さく燻っていたSub性を大きく開花させ、中学に上がる頃には“ごっこ”から“プレイ”に変わっていた。