「今日から1ヶ月行動を一緒にする補助監督の望月カナタです。長期の任務は初めてなんですが精一杯サポートさせていただきますので、よろしくお願いいたします!」
「夏油傑です。1ヶ月の長期任務は私も初めてなので沢山ご迷惑おかけすると思いますがよろしくお願いします」
頭を下げ合ってから、では早速と夏油君のスーツケースをトランクに詰め込み運転席へと移動した。
望月は高専に所属する補助監督の一人だ。二十三歳、明るくて人懐っこい性格なので学生にも年上にも好かれやすい。夏油とは今までも何度か任務で一緒になったことがあるが、まだ若いので学生より高専を卒業した呪術師と任務をすることが多かったのでそこまで交流があるわけではない。
一ヶ月という長期任務も出来る仕事の幅を増やすために与えられたものであり、学生ながら特級という実力がある夏油君と一緒なのも、同じ特級である五条君より大人っぽいからだと考えられていた。
「(それにしても、一ヶ月は長いな)」
夏油君にバレないよう小さくため息を吐きなが車のエンジンをかける。事前に任務の内容は話をしているので特に喋ることは無かった。
日本なのに丸二日中かけて移動をしてようやく一ヶ月お世話になる宿に着いた頃には、流石の夏油君も疲れたようだったので明日の集合時間を確認してから各部屋に行くことにした。
今回の任務は今まで高専が低級だし遠いからと後回しにしていた土地の呪霊を全て祓うことだ。何でも知る人ぞ知る自殺の名スポットらしく、ちょっと山の深いところに入ると見たくないものを見てしまう可能性が高いとか何とか。
知る人ぞ知るって、その知ってる人みんな自殺してんじゃないの? など若干不謹慎なことを考えながら一ヶ月間お世話になる部屋のドアをあけた。ちなみに何があってもすぐ対処法出来るよう夏油君と隣の部屋だ。
あまり観光客が来ないから少しだけカビ臭い気もするが、宿が車中泊とかよりは全然マシなので持ちこんだ除菌スプレーを湿るぐらい布団やカーテンにかける。すると、隣の部屋からコホッと夏油君の咳の音が聞こえてきた。
あー、ちょっと感じてはいたけどこのホテル壁薄いな。こういうちょっとのストレスを一ヶ月感じる事になるのか。俺は良いとして夏油君に迷惑がかかると任務どころか命に関わるから注意しないと。
そんなことを思いながらベッドへダイブすると、移動の疲れからか直ぐに睡魔が襲ってきたので頑張って目覚ましのアラームをセットした。
それから1週間が経ち、現地での事前調査が終わってやっと明日から呪霊討伐となった夜。
相変わらず物音を立てないよう任務の報告書を作っていると、隣の部屋、つまり夏油君の部屋からガタッと物音が聞こえてきた。
なんとなくそれに気を取られ耳をすましていると「はぁっ」と小さな吐息が聞こえてきた。もしかしたら体調悪くてそれを隠しているのかもしれない。責任感のある子だからそれを隠そうとしていたら大変なので、ちょっと変態っぽいなと思いながらも壁に耳を付けた。
「ん、はぁ」
「…」
「あ、ぅ」
「……」
…失敗した。うん、そうだよな、夏油君まだ十八歳だもんな。
壁からそっと離れてベッドに腰掛け、ヤニで黄色くなっている天井をじっと眺めた。耳をすますとまた夏油君の声が聞こえてきそうなので、出来るだけ意識を向けないようにする。
俺も抜こっかなと思ったが、もしこの瞬間呪霊や呪詛師に襲われたら俺も夏油君も出だしが一歩遅れてしまうので、…まあ、自慰にも万全の体制を整えなければならない。
明日夏油君と顔合わせるのちょっとだけ気まずいな。いっそのこと「聞こえてたよ笑」とか言ってみるか?
ベッドに寝転がりため息を吐く。体の奥から覚えのある感覚がふつふつと湧き上がってくるのを無視して、ギュッと目を瞑った。
次の日からの任務も滞りなく進み、あと二週間ほどで帰れるとなった夜。
レンタカーのガソリンが少なくなっていたことに気づいた俺は、夏油君と一緒に少し人の多い場所にある小さなガソリンスタンドまで車を走らせていた。
「いやー今日の呪霊は手強かったね」
「はい、けど良い呪霊を取り込めましたし明日からの戦いはもっと楽になると思います」
「お! じゃあ楽しみにしてるね!」
最初に感じていた気まずさも感じなくなっていて、なんなら夏油君の自慰事件のことなんか忘れていた。
人のいる気配のしないガソリンスタンドにつき、エンジンを止めて車を出ようとしたその瞬間「望月さんストップ‼︎」と夏油君のするどい声が飛んできた。
ビンッ‼︎ と強制的に体を引っ張られる感覚。
まずいかも、と感じる間もなく膝の力が抜けた俺は、グッと奥歯を噛み締めて運転席へ体を滑り込ませた。
ふわふわとした意識の中、窓の外を見てみると昼間に倒した呪霊に姿が酷似した呪霊が三体立っており、その前に俺を庇うようにして夏油君が立っていた。
「よく私のことを見つけられたね、マーキングでもしてたのかい?」
「ココ、ココココ」
「仲間を取り戻しにきたのかな?ふふ、じゃあ君達も私が操ってあげる」
余裕綽々の表情を浮かべた夏油君は昼間取り込んだ同じ呪霊を顕現し戦闘を開始したのだが、流石特級、ものの数分で襲ってきた呪霊を倒し呪霊玉を飲み込んだ。ふわふわとした感覚が落ち着いてきた俺は車を支えにしながら立ち上がろうとしたが、俺が立ち上かるより早く夏油君が近づいてきた。
「怪我はありませんでしたか?」
「お、おかげさまで」
いつもより動悸が早い。
夏油君の視線を痛いぐらいに感じる。
「望月さん」
名前を呼ばれただけなのにピクリと体が反応してしまった。夏油君の呼吸や醸し出している雰囲気、目の動き全てに意識が向いてしまう。
その薄い唇から発せられる言葉を今か今かと待ち侘びていると「帰りましょうか」と言われてしまった。
「あっ…」
「どうかしましたか?」
「ご、ごめん、なんでもない」
普段通りの夏油君の言動に一瞬で冷静になり、そういえばここにはガソリンを入れにきたのだということを思い出した。
ガソリンを満タンまで入れ、エンジンをかける。後部座席からはもうあの痛いぐらいの視線を感じなくなっていた。
ホテルに付き二人並んで部屋までの廊下を歩く。部屋の前で軽く明日の予定を確認してから「じゃあお疲れ様でした」と部屋に入ろうとした瞬間、右手の手首を掴まれた。
「どうしたの?」
掴まれた手首から腕を伝って目線を上に上げていく。黒い高専の制服、鍛え上げられた胸板に、ジッとこちらを観察するような目線。
あ、と思った時にはもう遅かった。
「おいで《come》」
振り解こうと思えばできる強さで握られた手首。
理性はダメだと警報を鳴らしてても、本能に抗うことが出来ない。
一歩、また一歩と夏油君に近づき、気づいた時には背後でドアが閉まる音がした。
*
「望月さんってみんなに好かれてるからSubっぽいなとは前から思ってたんですけど、まさか本当にSubだったなんて」
「…」
「しかもコマンドを出そうとしたわけじゃないのにストップなんて簡単なコマンドにあんなに反応して…。敏感過ぎてちょっと心配になっちゃいますね」
「…夏油君がDomなのは分かりやすい」
「よく言われます」
ベッドに腰掛けた俺の隣に座った夏油君はクスクスと楽しそうに肩を震わせながら、未成年とは思えないほどの色気を醸し出していた。
「抑制剤を飲んでるとはいえやっぱりソウイウの溜まってきちゃうじゃないですか。望月さんもそれは一緒でしょう? だからあんなにコマンド効いちゃったんですかね?」
「うる、さい」
「えー酷いなあ。…よく考えてみてください。本能が満たされないDomとSubが一緒の部屋にいるんんです。しかもお互いにパートナーはいない。そしたらスることは一つなんじゃないですか?」
「さっき、勝手にコマンド使ったくせに」
「それについては謝ります。けどほら、そのコマンドのケアもしたいですし。ね、いいですか?」
グッと物理的な距離を縮められる。
夏油君のいう通り俺にはパートナーはいない。Subとしての欲は適当なところに行って適当に晴らしてきたので、夏油君ともしようと思えば出来るし、なんならちょっと親しい部類に入るので凄く気持ちよくなれるのだろう。
先程だって突然コマンドを使われたのにケアなんて必要無いぐらい凄く満たされる感覚になったのだから、もしかしたら体の相性は良い方なのかもしれない。
「でも、夏油君未成年だし」
「未成年とプレイしてはいけないなんて法律ありますか?」
「がっ、学生と補助監督だし」
「なら親密度深めた方が良くないですか?」
「今任務中だし」
「こんな欲求不満な状況で放置されたら絶対ミスしちゃいますよ。言い訳は終わりですか?」
「う゛[#「う゛」は縦中横]っ」
「ほら、そんなに怖がらないでください。ノーマルなプレイをちょっとするだけですから。好きなものと苦手なもの教えて」
「…痛いのと汚いのは、苦手」
「あとは」
「頭をいっぱい撫でて、ほしい」
「ふふ、了解」
あぁ、折れてしまった。
「触るよ」
とびきり優しい声を出した夏油君は、ゆっくりと俺の頭を撫で始めた。まだコマンドを使っていないのにそれだけで一気に心が満たされる。
「望月さん」
名前を呼ばれただけなのにピクリと体が反応してしまった。夏油君の呼吸や醸し出している雰囲気、目の動き全てに意識が向いてしまう。
その薄い唇から発せられる言葉を今か今かと待ち構えていると耳元に顔を寄せられ、優しい口調で「お座り」とコマンドを出された。
ベッドに座っていた俺はそれだけで全身の力が抜けて夏油君の足元にペタンと座り込みながらも、己を言葉一つで支配しているご主人様から目を離すことはしない。
「上手だね。おいで《come》」
夏油君がぽんぽんと両膝の上を叩いたので、その膝に擦り寄るように近づくとまた頭を撫でられた。
褒められた
嬉しい
気持ち良い
Subとしての本能という大きな水槽に、ぬるま湯のような優しさが一気に注がれる。しかし、満たされそうになったところでまた水槽が大きくなるので、満足することの出来ないまま懇願するような目で夏油君を見つめた。
「なんたい、そんな見つめて」
「ん、」
「もっとして欲しいことがあるのかな?言ってみて」
「あうっ」
夏油君のコマンドは今までplayをしてきたどのDomより優しくて、ふわふわしてしまう。
「あ、あの、もっと」
「うん」
「…ギュッてして欲しい」
「コマンドじゃなくて良いのかい?」
疑問系の反応に心臓がヒュッと鳴った。Domにコマンドを使わさせず甘えるなんて俺はなんて馬鹿なことを言ってしまったんだ。これじゃ一人だけ満たされる自慰と一緒じゃないか。
「ご、ごめんなさいっ」
先程までのふわふわとした雰囲気が嘘みたいに冷えていき、夏油君の膝から離れようとすると足で体を挟まれてしまった。
「いや私の言い方も悪かった。嫌なんじゃないよ、ギュッてさせてもらえるかな?」
「でも…」
「言って」
「んうっ……夏油君にコマンド使わせないで俺だけ満足するとか自慰と一緒だなと思ってしまって」
「そんなに私のこと考えてくれたの?嬉しい。それに私も気持ちいいから自慰じゃないよ、ほらおいで」
俺に向かって両手を広げた夏油君は蕩けそうなほど甘い表情を浮かべている。
高校生にしてはしっかりと鍛え上げられた胸元にコマンドの影響で少し勢いをつけてしまいながら飛び込むと、直ぐに背中に腕を回されて動けなくなる。
「ちょっと動くよ」
そう囁かれたと思いきや、そのまま体をズルっとベッドの上に引き上げられ「私のこと跨いで」と赤ちゃんに言い聞かせるように言われた。
結構大胆な体勢だったからちょっと恥ずかしかったけど、夏油君を満足させたい一心で足に跨った。
「あ、こら、体浮かせちゃダメ」
「うぅ」
「座れ」
「ひゃっ」
踏ん張っていた足の力が抜けて夏油君の膝に完全に体重をかけてしまった。するともう一度背中に腕を回されて、体同士をピッタリとくっつけ合わされる。
「ちゃんと座れたね、良い子」
何度も、何度も、goodが俺に送られる。
あぁ、夏油君に心も体も預けてしまった。
心地よさから目を瞑り、彼の首元に頭を預ける。大人しくなった俺が面白いのか、ふっと小さく笑った夏油君はそのまま俺が満足するまでずっと抱きしめてくれていた。
*
「お疲れ様です。ここ三日ほど経過観察を続けているのですが呪霊の気配は全くと言って良いほど無くなりました。はい、今は夏油さんが最後の見回りに行っています。はい、……了解致しました。では明日、えぇ、ありがとうございます。気をつけて帰ります、はい、お疲れ様でした」
携帯を閉じてグッと伸びをすると、背骨がポキポキと鳴った。そのまま腰に手を当てて左右へ体を揺すっていると遠くの山から呪霊に乗った夏油君がこちらに向かってきているのが分かった。
「呪霊のじゅの字も見当たらないですね」
「お!やったー‼︎ さっき高専の方にも連絡したんだけど早めに帰ってきて良いって」
「本当ですか! はあ、長かった…」
「お疲れ様でした」
深く頭を下げると呪霊から降りた夏油君も「お疲れ様でした」と頭を下げてくれた。
期間にして約三週間。慣れない地で低級から上級まで本当に沢山の呪霊を祓った夏油君の顔には流石に疲労が浮かんでいた。
「帰れるって言っても今日はもう夕方だから移動を始めるのは明日だけどね」
車に乗り込みエンジンをかけ、帰ったら駅前のラーメン泣きながら食いたいな、夏油君とお疲れ焼肉とか行くものいいなと考えながら宿まで運転をした。
十五分ほどで着いてから各々部屋へ戻り帰宅の準備を進める。あらかた片付いたところで、大きなため息を吐きながらベッドへ寝転びボーッとしていると己の息子が何故かムズムズと外に出たがっていることに気づいた。
「……」
大きな仕事が終わった解放感からだろうか? 全く素直だなお前と息子を馬鹿にしながらもベッドの上に座り、スーツのベルトを外しズボンを足首のあたりまで下げた。
何かオカズをと考えていたら隣の部屋から小さく夏油君の声が聞こえてきた。
「あぁ悟、久しぶり。うん、明日帰れることになってね。まあ移動に二日かかるんだけど。うん、うん、分かったよ帰ったら桃鉄な。あんまり後輩に迷惑かけるなよ」
俺と喋る時とは違う声色。夏油君って同級生にこんな風に喋るんだ。
下半身丸出しのまま何となくそれを聞いていると「ふふ、偉いね悟は」と笑いを含んだ声が聞こえてきた。
その瞬間、俺の中の何かがドクンと跳ねた。
あーマズイ、なんでこんな簡単な言葉に反応してんだ俺は。一回簡単なプレイしただけだぞ?未成年の盗聴してる声に反応して勃起するとかマジで最悪だろ。
そう思っているものの、情けないぐらい体は正直グングンとモノは大きくなっていく。もうここまで来たら出すもの出さないといけないだろうが。
「(夏油君、ごめん!)」
そう思いながら己の陰茎に手を伸ばし、竿の部分を人差し指と親指で擦り始める。ゾクゾクとした感覚と共に、さらに硬さを増したそこを本格的に扱きあげる。
「んっ、は…」
先端から我慢液が出てきて滑りを良くする。亀頭部分を手のひらでくるくると刺激をすると腰が震えてしまいそうなほど気持ちよかった。
「あんまり硝子に迷惑かけちゃだめんだよ。うん、面白い呪霊も手に入ったから帰ったら見せてあげる」
「う、っ」
夏油君の声が聞こえる状況でオナると、プレイしてもらった日のことを思い出してしまう。
膝に乗って安心感のある大きな体に包まれる。あの時はできるだけ意識しないようにしたけど完全に対面座位の