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    はも@🐈‍⬛🎏原稿

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    12月の尾鯉プチの進捗その2

    #進捗
    progress
    #尾鯉
    koi

    何方 進捗2 尾形百之助、二十一歳、大学三年生。茨城の実家を出て、都内のアパートを借りて大学へ通っている。大学自体は実家から通学することができる。少々息子に対して過保護な両親と弟は、尾形が実家を出て一人で暮らすことに反対をした。実家から大学に通うの不便なこともあるが、楽な面もある。
    『百が心配なのよ』
     母親は進学を機に一人暮らしをしたいと訴える尾形に涙ながらに反対をした。
    『別にここで生活をしながらでも問題はないだろ』
     自分と目がそっくりな父親は悲し気な顔をしていて、自分が泣きそうになるとあんな感じなのかと尾形は人ごとのように思っていた。
    『兄さんと離れたくない』
     ぐずぐずと泣きながら尾形の意志を否定する弟に少しだけ苛立ちを覚えた。
    『誰が何と言おうと、俺は一人で暮らして大学に行きます』
     この家族の中にいるのは苦しいんだ。尾形は本当の理由を言わず、家を出ることだけを頑なに訴えた。別に家族仲が悪いわけでもない。両親の仲も良いし、弟も自分の弟だと言うのは躊躇われるくらい性格が良い。傍から見れば理想の家族ともいえるような素晴らしい家族だ。でも、尾形は幼い頃から自分がそこにいるのは正しいのかとずっと疑ってきた。はっきりとした理由は分からない。でも、自分の居場所はここではないという違和感だけはある。

     何か違うと初めて感じたのは尾形が小学校に入学してしばらく経ってからのことだった。その日は土曜日で、午前中に弟と一緒に庭で遊んだ尾形は昼食の後に日当たりの良い和室で昼寝をしていた。春になり風も暖かくなってきたから、部屋の窓が開いていて、心地よい風が流れていた。弟と一緒に畳の上で寝ていた尾形であったが、急に目を覚ましバタバタと慌ただしく玄関へと走り出した。今思えば、その時も例の夢を見ていたのだろう。靴も履かずに玄関を出て外に行こうとする幼い尾形を母親が見つけ、叫び、追いかけて捕まえた。
    『百ちゃん⁉︎どうしたの!』
    『やだ! おかあさん、はなして!』
    『百、ひゃく‼︎』
     母親の腕の中でバタバタと暴れる尾形と、二人の叫び声を聞いた父親が家から飛び出し、騒ぐ尾形を抱えて家の中に連れて帰った。急な衝動を制することのできない幼い尾形はしばらく母親の腕の中で泣き喚き、疲れ果てて眠りについた。
    『百ちゃん、大丈夫?』
     目が覚めた時、母親は目に涙を浮かべていた。尾形はそんな母親の表情に違和感を覚えたのだ。
    ——おっ母じゃない
     違う、今目の前にいるのは僕のお母さんだ。
    違う、おっ母じゃない。
    お母さんだよ。
    おっ母じゃない。
    尾形の頭の中で肯定と否定の言葉がぐるぐると巡る。目の前にいるのは自分の母親で間違いないのに、理由の分からない違和感が尾形の頭のなかを少しずつ埋めていく。
    『おにいちゃん?』
     昼寝から目が覚めた弟が尾形を呼ぶ。
    ——ちがう、兄様って呼んでた
    『ッ、』
    『百之助?』
    『おにいちゃん、どうしたの?』
     尾形は自身の口を手でふさぎ必死で吐き気を抑えようとしていた。
     母さんなのに、母さんじゃない。弟なのに弟じゃない。尾形が今まで一緒に過ごしてきた家族なのに、頭のどこかで誰かが違うと叫んでいるような気がして、気持ちが悪かった。
    『ひっ、ぅ、ぐっ、うぅ』
     尾形の頭は混乱していた。家族なのに頭の中の誰かがそれを否定する。どうしてそうなってしまったのか全く分からない。身体の奥底から叫び出したくなるような恐怖と違和感。小学生になったばかりの子どもの頭では、じわじわと自分を侵食していくような恐怖を言葉にして説明することが出来ない。助けて、と母親に助けを求めることすらできない、自分自身に対する怒りも子どもの尾形の心を蝕んでいく。今まで自分が体験したことのないような負の感情が、自分を真っ黒に塗りつぶしていくような感覚に、尾形は母親の腕の中で震えることしか出来なかった。

    「そんなこともあったな」
     尾形は小さく呟き地面に伸びる自分の影を見つめながら歩く。
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    はも@🐈‍⬛🎏原稿

    SPUR ME恋音展示が間に合わない文量になったので、現在できてるところまで公開します!本当にすみません!完成したら完全版をpixivに投稿しますので、よろしくお願いします。
    函館に引っ越してきた鯉登くん(16)が冬季鬱っぽくなったのを、ここぞとばかりに手を差し出して手に入れようとする尾形百之助(21)の話です。
    極夜にて「尾形はあたたかくて、すきだ」
     そう言って尾形の膝の上に形の良い丸い頭を置いて少年が呟く。少年の声は声変わりが済んでもまだ少しばかり声が高く、甘い。
     尾形、おがた。何度も甘い声で名前を呼ばれ、尾形はくつくつと肩を揺らして笑う。
    「なぁ、もうここで暮らせよ」
     艶のある黒紫の髪を撫で、少年の耳を指で柔く揉む。たったそれだけなのに、少年の耳が赤く染まる。黒い瞳がゆっくりとこちらを向く。気が強い性格で、誰にも弱ったところを見せようとしなかった子どもが、今は縋るような目で尾形をじっと見つめている。
     この少年には自分しかいない。言葉で言われなくとも、少年の視線、表情、態度で解る。それが尾形にとって他の何にも変えられない幸福――黒くどろどろした幸せが自身を染めていく感覚にうっすらと微笑んだ。
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