鯉登には、幼い頃たまに遊んだ名前も知らない友達がいた。
家の近くには公園が2つあって、何故か片方の公園は親に「行ってはいけません」と釘をさされていた。でも行くなと言われれば行きたくなるのが好奇心旺盛な子供の性。こっそり遊びに行ってみるとそこにしかない遊具があり、どうしてもそれで遊びたくなった鯉登はバレないように公園へ通うようになっていた。そこで出会った友達だった。
物静かで、いつもタイヤに腰掛けてボーッと周りを眺めている奴だった。最初は気味が悪いなぁと思って見ていたけれど、何を考えているのか知りたくなって声をかけてみた。
「みんななにがたのしいのかなとおもって」
なるほど、楽しく遊ぶことを知らないんだな。鯉登は自分の知り得る『楽しい遊び』を全部教えることにした。
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