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    uto_aa_saiga

    字書き/灰七/そっと片隅に生きてます。

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    uto_aa_saiga

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    灰七 転生パロ 灰も七も女性交際経験あり 現在はフリー
    進捗…っていうかまあ、最後まで書けたらいいねーくらいに。
    webオンリーに進捗だそうとして忘れてたヤツですね。

    #灰七
    ash7

    約束の涯て(仮 七海建人は、前世というものがある。思い出したのは高校入学の頃である。
    高校は地元、そこそこ田舎の田んぼの中ののどかな校風であった。そこそこ田舎なだけあって外見の上からの隔意は少々あったがそれも人によるという程度であからさまな陰湿ないじめなどには遭ったことはない。とにかく長閑だ。
     どのくらいかと言えば、だだっ広がる田んぼの中に学校があるのだ。 
    あの山の中とどっちがいいんだろうかと、具体的に何かと比較した事に気づいて、疑問を抱いた。明確な比較対象の山中の学校なぞ行った事実はなかったからだ。
     そこをきっかけにしてどんどん手繰られる記憶に驚いた。自分の生まれる前の自分の記憶によれば、我ながらなかなかハード且つ重い人生を送ったらしい。
     前世では呪いが見えるせいで、人に馴染めず、高校で同級生に出会うまで親しい友人を作れずいたのだが、何のことはない、今世だって特別親しいと言い切れる友人はいないので、単に自分が人付き合いが下手であるという事実が判明しただけであった。非常に残念な事である。
     幼少の頃に記憶が戻っていたら、肉体の実際と記憶の年齢の乖離で大変な苦労をしたかもしれないが、自我が確立した高校生にもなれば多少達観した言動であっても、大人びた子供も実際いるし、背伸びもしたい年頃という故もあったのだろう。27歳分の精神年齢の加算は、元々の控えめな性格にもよるが、周りに大きな違和感を与えずに馴染んだ。
     元の個人となる魂とでも言うのだろうか、そういうものが同じであるならば、劇的な家庭環境の差でもなければそうそう変わるものでもないのらしい。
     そして、15年生きてきてからであったので、読書好きも功を奏したのか、27年の重い記憶もダイレクトに自身の経験として上書きされる事なく、ひとつの物語としてある程度俯瞰して視る事が出来た。
     それ故に、前世を思い出したからと言って、さほど性格を歪めるような影響を受ける事もなく、中二とか黒歴史などを生産するようなことも無く、前世からの使命だとか宿命だとか受け取ることもなく、淡々と事実のみを受け入れた。
     ただ、ひとつだけ。
    高校、というフレーズでただ、ひとつだけ期待したものはあった。

     会えないだろうか、と。

     だって高校入学が契機である。かつての同級生に会えるかもしれない、そんな期待をするなという方が無理だ。
     まあそれも残念ながら、同じく前世の記憶を持った人物や、記憶がなくても前世で出会った事のある人物などはついぞ現れる事もなかった。

     なにか劇的なこともなく高校を卒業し、大学へ進学し、就職した。
     就職に関しては前世のことがあったので、そこは充分参考にした。程ほどに生活できればそれほど大金は必要ない。もちろん在るに越した事は無いだろうが、前世はあそこで金に執着したのが良くなかったのではないかと今なら思う。
     食い道楽と言えば言い過ぎだろうが、おいしいに超した事はないという趣味の元、料理人になる程にはこだわりはなく、だが食べるものにはある程度こだわりがある事から、食材をメインに扱う商社へと就職した。もちろんホワイトな職場かどうかは慎重に慎重を重ねて、繁忙期はともかくとして多少なりとも定時で上がれる日があるような職場を選んだ。
     趣味が食べ歩きと料理と言えば、社割があると紹介され色々な意味で美味しい職場であり、楽しみながら仕事が出来るのは幸福な事だと思った。

     そうこうして、いつしか気づけば前世の享年を迎える年齢になっていたのだった。

     遠い物語のようだと嘯(うそぶ)きながらも、極力首都圏には近づかないようにしている事に気づいた時にはなんだか笑えたものだが。
     前世の記憶は少なからず無意識に影響を与えているようだ。
     まあ東京などに行かなくても近郊にはそれなりの都市もあるし不便はない。
     むしろ商業施設などは田舎のほうが広かったりする。広大な駐車スペースを使用してのグルメイベントなどが開催されれば出店舗をはしごするのも楽しいものだ。

     今日も近場のアウトレットモールで駐車場を利用したB級グルメのイベントがあると知って、ハンドルを握った次第だ。

     こうして休日にぶらぶらと出かけて、人が笑って歩いているのを見るのが好きだ。

     …と、言うよりどうしても一定以上の人混みをみるとその一人一人を見てしまう。
     何人かの女性と付き合った事があるが、長続きせずにふられる。他に好いた人間が居ないのならば是非と乞われて、女性のほうから押し通されて付き合ったにもかかわらず、だ。
     面白みの無い人間だから飽きられたのだろうと思っていたのだが、最後の彼女に言われた事がある。

    「いつも誰を探しているの?」

    女性と出掛けたときに人混みで誰かを探していると指摘され、初めて自覚した。

     そうか、私は探しているのか。

     同じように何回か「私を見ていない」旨を言われて(もちろんそんなつもりは無かったが)振られた事もあり、相手に失礼だなと以降はどれだけ女性に乞われてもお付き合いはしないことにした。このまま行くなら両親には申し訳ないが、生涯独り身だろうなと、最近は思うようになっていた。昨今そういう男性も増えているし気にしてもしょうがないだろうと諦めている。

     そして無意識にしていた人捜しも指摘された時にはしないように気をつけたものだが、自覚して諦めた。どうあっても探してしまうのだからどうしようもないものだと。

     今日も駐車スペースへ車を駐め、イベント会場へと休日の人波に流されながら、つらつらと人々を目で追う。
     七海は目の色素が薄い為、陽射しから保護するためにも、ドライブ用にブラウン系のサングラスを掛けている。車を出るときに一旦外したが思ったよりも強い陽射しに屋外イベントである事も考えて、そのままサングラスを掛けていく事にした。
     周りも同じようにサングラスを掛けている人もチラホラ見受けられるので不審には見えないだろうと歩き出す。

     笑い合う家族、仲睦まじい恋人達、ふざけて小突き合っている学生達。
     この平和な空気の中に当たり前のように居ると、時々、不思議な気持ちになる。夢だとか幻だとか思うわけでは無いが、何か現実味が薄い。そして淋しい。誰かとこの穏やかさを分かち合いたいのに、かたわらの不在を思い知る。

     道の端からB級グルメの出店者だろうか、ビラを配っている男性の声も聞こえた。
    「よろしくお願いしまーす!」耳元で言われたらうるさいと思えるような声。記憶にあるよりも少し低いような気もする。
     目の前にビラを差し出され、反射的に受け取る。そのまま数歩、道の端へと進んでハタと止まる。ゆっくりと信じられない気持ちで振り返る。

     黒くて大きな瞳と、意志の強さを示すような眉、大きく笑う口元。

     大きな声で名前を呼ばれそのたびにそんな大声で無くても聞こえると、そう返した事を思い出す。

    (…灰、原…?)

     今、この瞬間に思い知る。
     遠い物語とか嘘だ。
     そうやって割り切らなければ、いや、誤魔化さなければどうにもならなかった。人混みに探さずにいられない時点で明白だった。そうだ、探していた。ずっと、ずっと。
     こうして生きて動いている灰原を見たかったのだと。
     視界が水分をフィルターにしてぼんやりとにじむ。溢れた涙は自分でも驚くほどに次から次へと流れ続けて、その間にも彼から目が離せない。

     大きな声でビラを配る彼は、相変わらずの笑顔で元気そうだとまた涙が流れる。
     そうしてどのくらい立ち尽くして見ていたのだろうか、彼が明確にこちらに気付いて近づいてくる。
     これだけ図体のでかい、いい歳した男が涙を流しながら立ち止まって見ているのだから、気付くのは当然だろう。完全に不審者だ。

    「あの!どうかしましたか?具合が悪いとか…」

     とうとう七海の目の前に至って、心配げに声をかけてくる。
     ああ、不審者ではなくて体調不良者かと思ってくれたわけか。善意の塊のような性格は変わりないのだろうかと七海は思う。
    「いえ、大丈夫です」
     お構いなくと、まっすぐな視線を避けるように少しうつむいたところで、未だに溢れ続ける涙がサングラスにしたたってレンズが濁った。いい加減、涙を拭う為にもサングラスを外してハンカチをポケットから探る。

    「……な、なみ?」

     呼ばれて、驚いて顔を上げた。
     驚きに見開かれて真っ黒い瞳がこぼれそうだなと、場違いな感想を思った。

    「七海?ほんとに?」

     明らかに呼びかけに反応した事に自信を持ったのか、名前をもう一度、確かめるように呼ばれ。
     その声で名を呼ばれた事に、胸を突かれ、そろそろ枯れるのでは無いかと思うのにさらに涙が水量を増す。

    「…はい、ば、ら…」

     オロオロとした灰原がふと周りを見回して、慌てて七海の手を引いて誘導する。
    「こっち」
     手を引かれながら先ほど握ったハンカチを思い出してやっと涙を拭う。そして周りから好奇の視線を浴びていた事にやっと気付いて赤面した。
     灰原が手を引いてくれるのをいい事に、うつむいて顔を隠すようについて行く。いい歳の男性が泣いていた事は実は声も無く立ったままだったのと、七海がサングラスで目元が隠れていた事で、灰原が声を掛けるまで実は目立っては居なかった。実はその後の、大の男が二人で手を繋いで移動を始めた事の方が目立っていたのだが、幸か不幸か七海がそれに気付く事はなかった。





     七海の手を引きながら、その手を繋いでいること自体が夢のようだと灰原は思う。

     客先のアフターサービスがてら、ただ待機も勿体ないと、チラシ配りを引き受けて、張り切って配って居る中に、突然立ち止まった男性に気付いた。
     背はかなり高い。痛んだ様子の無い金髪はおそらく地毛でその顔の彫りの深さと体格を見ても異国の人かなとそう思う。その金の髪を見ると、自分でも半信半疑だが前世というものに気付いた時を思い出す。過去の同期も確かクオーターで四分の一だけ北欧の血が入っているのだと言っていた。
     あまりじろじろ見ていると不審者だ。それでもチラリと見るのは止められなかった。
    線の細かった彼が、年を重ねたらどんな感じなのだろうと想像する。前世なんてただの妄想で、彼なんて存在しないのかもしれないけれど、想像するだけなら、それを誰にも言わなければ、自分の胸の内は自由だ。
     視界の隅で確認すれば、金髪の男性がまだこちらを見ているのが分かった。
     なにか失礼な事でもしただろうか?
     灰原はそう思い至って、もう少し視線を向けてみる。
    「え」
     サングラスで目元自体は見えないが、頬が濡れているのが見えて、自分でも驚くほど心配になった。見ず知らずの人なのに。余計なお世話だと思われるならそれでもいいと、躊躇は一瞬で振り払いその人へ歩み寄った。
    「あの!どうかしましたか?具合が悪いとか…」
    「いえ、大丈夫です」お構いなくと言いながら、男性は俯いて涙に濡れたサングラスを外した。
     そうすると少し下向きの顔が見え、サングラスに隠されていたその瞳があらわになった。

     いつか見た、海の色。焦がれた瞳の色と同じ。

    「……な、なみ?」

     つい、ポロリと口からこぼれて、慌てて口を閉じたが出た言葉は戻らない。どう言い訳するのかを咄嗟に考えれば、それを思い付く前に、男性は驚いたように顔を上げた。
     呼ばれた事に、驚いたようにしか見えなかった。まさか。

    「七海?ほんとに?」

     確かめる為に呼びかければ、男性は、いや七海は、静かに涙を増した。
    「…はい、ば、ら…」

     その声に呼ばれて、胸がギュッとなる。夢ではなかった。妄想ではなかった。ちゃんと七海は居たのだ。




    -----------------


    とりあえず、再会シーンまで書きました。
    なんか七海を泣かせたかったので満足。
    灰原はこの後の方で泣かせます。

    きっといつか書き上がるです。

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    Replies from the creator

    uto_aa_saiga

    CAN’T MAKEお祭りありがとうございます!!
    未完品でお目汚し失礼します。灰七と言い張る系の灰七です。
    後半部の繋がりおかしいとかフラグ管理失敗とかほぼト書きとかそいういう低鱈苦です。

    平行世界交差IF
    灰七感低め、無糖、ブロマンス感強し
    以下注意点
    ・夏油離反なし、五条離反(not呪詛師)
    ・七海死亡シーンあり
    ・灰原に対してのみ七海が丁寧語じゃない
    きっと一生忘れない「灰原、誰か…いや、五条さんへ連絡を!」
     山の傾斜の中、道の無い木々の間を逃げながら、一瞬思案した七海が灰原に向かって指示を出す。
    「わかった!」
     夏油さんは今日は任務が入っていると言っていたが、五条さんは久しぶりに休みだと言っていた気がする。確かに七海の言うとおり、助けを求めるならすぐに動ける可能性のある五条さんへ連絡してみる方がいいだろう。
     灰原はそう七海の言葉から察して携帯を操作する。
     アンテナはかろうじて圏外にはなっていないが一本しか立っていない。さもありなん。近くの集落だった場所は人は居らず、その隣の集落とて人は減る一方だという話だった。

     山自体は季節によっては山の幸を穫りに人が入る事はあるという。そうやって入山した人間が無惨な姿で見つかる事件が起こり、窓が残穢を観測して呪霊の仕業と発覚した。
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