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    shiraseee

    @shiraseee_0108_

    気ままに更新しています。
    サイレント更新&修正は常習。
    凪茨ばかりですが、たまに他CPなども。

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    shiraseee

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    凪→茨
    夢オチと凪砂、戸惑いの茨。

    もう少し明るいものになるはずが…
    力尽きて突然終わります…

    ##凪茨

    ゆめとうつつ、それからとまどい────────



    「閣下、もう行くんですか?まだ…キスもしてないのに?」
    ぐいっと腕を引かれ、振り返ると茨が私を見上げていた。
    そのまま数歩、茨のすぐ後ろにある壁まで一緒に下がっていく。まだ自分の意思は含まれてないにしろ、私が茨を追い詰めたような体勢になった。
    「……茨…?」
    突然どうしたのだろう。尋ねようとして名前を呼ぶと、はにかんだような笑顔が咲く。照れ隠しなのか、ちょっと目線を下げたあとに上目で私を捉えた。
    私でいっぱいの青色。茨の世界を今、私で埋め尽くしている。
    どくん、と痛いくらいに胸が高鳴りだした。
    「…閣下。ねぇ、……」
    言葉は少ないかわりに、瞳が全てを訴えている。私を誘い、求めている。熱い欲を蕩かせたような瞳で、真っ直ぐ見ないで欲しい。
    私も同じだけ返せたらいいのに、少し躊躇ってしまった。だけど茨から目が離せなくて。
    「閣下」
    至近距離で互いを呼んで見つめあって。
    このまま触れてもいいのかな。悩んでももう遅いかもしれないけど、だけど、私たちのことをみんなに知られてしまう。
    (…あれ?)
    そこでふと、先程まで日和くんもジュンも、4人で居たはずの賑やかだった部屋はいつの間にか静寂に包まれていたことに気付く。

    だから、私たちしかいなくて。
    茨と、ふたりきり。

    「───っ……」
    「あ、…んっ…」
    頬に添えられた手は、かたちをなぞるようにして滑り唇までおりる。指先が触れる。同じように触れて欲しい、と吐息が告げた。
    我慢できずに誘われるまま、ゆっくり顔を近付いていけば待ちきれないとばかりに茨から唇を重ねてきた。
    「んんっ、ふ……」
    「……はっ…、…っいばら…」
    「あ…。かっ、か……おねが、もっと…」
    唇が僅かでも離れるのが惜しいと、舌が誘う。
    触れるだけではもどかしく、啄むような優しいキスではなく。混ざり合うように、二人で溶け合おうとこの熱を交わした。
    もっと。私も茨が欲しい。離したくない。
    「ふふ、…ぅんっ…!はぁっ…」
    ああ、嬉しい。私の想いが伝わったかのように、茨もかわいらしく笑ってくれて首に腕を回しぎゅっと抱き着いてくる。細い腰を抱けば、もうどこにも隙間なんてないのに更に体を寄せてきた。
    「…茨……」
    「ん、閣下…。閣下、おれの…」
    呼ばれるたびに私の心は幸福感で満たされていく。
    こんな、まるで夢のようなひと時が───……



    「───……夢…?」
    …虚しいかな。現実はそう上手くいかないようだ。
    私の意識を覚醒させたのは熱っぽい茨の声ではなく、無機質なアラームの音。見たのはかわいらしい茨の姿ではなく、見慣れた天井だった。
    「……………」
    瞼を閉じてみても、もうあの夢には戻れない。
    自分の欲望だけが見せてきた非現実。嬉しくて幸せだったのに、醒めてしまったら残ったのは虚しさだけ。
    しかし、夢と言うには鮮明すぎで、あまりに都合が良い。頭の中で思い描いた空想や妄想の類が、無意識に現れて見せられた感覚に近い気がした。

    ───あれは私が、一度は望んでしまったこと。
    『きっとまだ、何も知らないのでしょう。こう言うのはとても心苦しいですが…その気持ちは、間違いなんです』
    その時に否定するというより、諭すように優しく話してくれたことを思い出す。
    溢れかけていた想い、それを寸前で止めてくれた。茨に対しては誠実でいたいと、正しく在りたいと、頷いて蓋をした。
    しまいこめていたと、勘違いしていた。茨への想いを無くそうとして、けれど結局は何も手離せなかった私への罰かもしれない。
    「……はぁ…」
    起き抜けからこんなに気が重いことが、今まであっただろうか。ベッドから体を起こしたくないと、思わず溜息も出てしまう。
    それもそのはず。
    今日は一日、茨と二人で仕事なんだけれど。
    「……どうしよう」
    きちんといつも通り、茨の望む姿で振る舞えるだろうか。





    「おはようございます、閣下!そろそろいらっしゃる頃かと思い、朝食の用意は出来てますので冷めないうちにお召し上がり下さい!」
    共有ルームに向かうと、私を見つけた茨の快活な声が響く。
    おはよう、とだけいつもより小さく返す私の様子を見ても、茨からの反応は無かった。
    少し奥まった場所にあるテーブルまで促され、茨と朝食を囲む朝のゆったりとした時間。
    炊き立ての白米のあたたかさも、特に好きなお味噌汁の味も、香ばしく焼かれた鮭の香りもよく分からなかった。
    向かいに座り、黙って一緒に食事をとる茨の顔を盗み見る密やかな楽しみすら出来ず。
    それどころか茨の唇にばかり目がいってしまい、気付いては目を逸らしてを繰り返していた。茨に指摘されることが無かったのが、唯一救いだった。
    (……あまり態度に出さないようにしないと)
    単なる夢だったとして、身勝手な妄想だったとまた深く深く、見えない暗闇の底へ沈めてしまえばいい。だけど、どうしてか今回は出来ない。
    (……目の前にいるのに、すごく遠く感じる)
    茨のそばを居心地良く感じられないことは、ただ苦しかった。





    朝食を済ませ、片付けに向かおうとする茨を引き止める。
    「……茨、お願いがあるんだけど」
    「はい。どうぞ何なりとお申し付け下さい!」
    振り返り、笑顔で接してくれるのは嬉しいはずなのに。かわいいと思っても、口にすると止まらなくなりそうで律するので精一杯だ。
    だから、気持ちを整理したい。
    「……今日、あまり私に近寄らないでほしい」
    「え。……え?それは、何故」
    「…仕事はきちんとするから、今日だけ私のことはちょっと放っておいてほしくて」
    茨に告げると、勢いよく問い詰められるかと思えば聞こえたのは困惑の声。
    珍しい反応に綻びそうになる表情を結んだ。
    「あの、閣下?その〜…自分は知らぬ間に、閣下に対し何か無礼な働きを…?もしや、朝食がお口に合いませんでしたか?」
    「…?茨は何も悪くないよ。朝食はとても美味しかった、ありがとう」
    恐る恐るといった様子が不思議で、首を傾げる。
    「でしたら、何故突然そんなことを」
    「…あとはもう、自分のことも自分でやるから。気にしないで」
    「いや、えっと、待ってくださ」
    「…それで茨は仕事に思い切り集中出来るだろうから、いいよね?」
    「うっ……、………」
    「…茨?返事は?」



    「……って言ったら、茨が動かなくなっちゃったんだけど」
    「それは流石に、茨が可哀想っすよぉ…!」
    「…私は、少し自分の考えを整理する時間が欲しくて話したのに、茨がこうなったのが不可解で…」
    「待ってください、そうやって言ってないですよね?」
    「……?言わなくても、茨なら私の気持ちを汲んでくれるから必要がないと判断したんだけど」
    「言ってないからこんなんになっちまってるんでしょう!ナギ先輩!!」


    ────────────
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    Replies from the creator

    shiraseee

    DONE凪砂くんが眠る茨を見つめて、かわいいなぁ、好きだなぁ、と思うおはなし。同棲している凪茨。
    茨は眠ってるだけになってしまいました。

    新年書き始めとなりました。とんでもなくふわふわとした内容ですけども…こういう凪茨が好きなので、今年もこんな感じのを書いていきます。
    暇つぶしにでもなりますと幸いです。
    拙作ばかりですが、たくさん書いていきたい!どうぞ今年もよろしくお願いします。
    しあわせの風景────────

    薄ら開いては閉じを繰り返す瞼に、注ぐあたたかな陽射し。まだ少し重たいけれど、微睡みから目覚めていく意識が次に捉えた柔らかな匂いに幸福感すら覚え、覚醒していく。
    日向より私に近しい匂いは、すぐそこにある。
    すん、と小さく鼻を鳴らして吸いこんだ。再び眠りに誘われてしまいそうになる安堵感と、心地良さ。この匂いにほだされ、自然と求めてしまう。
    随分そばにあったぬくもりも抱き締め漸く開いた私の視界は、見慣れた暗紅色が埋め尽くしている。
    「……茨…」
    「……………」
    「……?」
    ───珍しい。ぴくりとも反応がない。
    普段なら名前を呼べば起き上がるとまではいかずとも、私の声を聞けば、ふと長いまつ毛を持ち上げ茨の美しい青に私を映してくれることが常だった。その時の、茨の世界にまず私が在れるひとときに期待して暫く様子を見ていても、瞼は開くどころか、かたく閉ざされたまま。どうやら茨は、無防備にも私の腕の中で熟睡している。
    2000

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    しかしオレの方が到着が早かったようで待ち合わせ場所にミハルの姿はなく、まあ向こうから提案してきたのだからそのうち来るだろうと思い気長に待つことにしたのだ。

    ミハルとは先日偶然面識を持ち、そして思いがけないことからお互いの体質について知ることになった。オレは度々訪れる破壊衝動のエネルギーを“吸魂”という形でミハルに抜いてもらうことによって、ミハルはオレのエネルギーを吸って体力を回復することによって、互いに平穏な学園生活を送れるようになるのである。
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