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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    52話目です。

    52桜子さんは眼帯を外した。

    「私は五条桜子と申します」

    「片目の六眼……?」

    「左様です。どうぞおかけください」

    私たちは桜子さんの向かい側に座った。
    桜子さんは先週私にしたのと同じように自分の生い立ちや千里眼について悟に説明した。

    「左右で見えかたが違うので疲れます。眼帯をさせていただきますね」

    「ちょっと待って」
    眼帯をつけようとする桜子さんを悟が止める。

    「実のバリアは見えてる?」

    「見えておりますよ」

    「何色?」

    「これも何かの縁を感じますね。ソメイヨシノの色。桜色です。」

    「本物だな……。あぁ、眼帯していいよ。疲れるのはよく分かるから」

    「そんなに疲れるの?」
    私は今までそんなことを考えたこともなかった。

    「俺は両目で見てるからまた違うだろうけど、なんせ情報量が多いから。俺にしてみれば実がどんな景色を見てるのか分からないよ」

    「えぇ?!そうなの?!」

    「六眼でなければ分からないことでございますよ」
    ふふっと桜子さんが笑う。

    「実は安定してずーっと桜色だからずっと見てても疲れない。むしろ落ち着く。激おこの時はちょっとゆらぐくらいかな」

    「へぇ……え?待って?私の顔の作りってちゃんと見えてる??」

    ぶーっと悟と桜子さんが吹き出す。

    「見えてるよ!ふつうの人が見てる映像よりずっと情報量が多いってだけ!」

    悟はゲラゲラ笑っている。

    「そんな笑わなくても……だって六眼の見えかたなんて分からないし……」

    「呪力が見えるのはもちろん、見ようと思えば血管まで見えるよ」

    「怖っ!!!」

    「ふふふふふ。よって血液がどこに集まっているかが分かるから実が次にどこを触って欲しいのかもイキそうなのかも一目瞭……」

    「ちょっと!!!!」
    私は悟を遮る。
    そんなことまで見ていたとは……

    「ま、そんなことよりね」

    咳払いをして悟が改まる。

    「俺の六眼が、『半分』ってしきりに伝えてくるんだけど。どういうことか桜子サンは分かってるんだよね?」

    「実さんの胸騒ぎの原因だと思われます。その胸騒ぎの原因を知る為に実さんは私を訪ねてきたのです」

    「なるほど?で、どんな原因?」

    「いやそれがまだ聞いてなくて……先週は六眼を見せられて結構動揺しちゃったから悟と一緒に聞いた方がいいかなって……」
    私は予め桜子さんと打ち合わせた通りに嘘をついた。
    悟の六眼なら、胸騒ぎの大元に絶対に気付くはずだから、と。

    「私の六眼は不完全。正に半分なのです」

    半分?

    「つまり、もう半分がいるってことか?」

    「どうやらそのようです。左目が六眼の人間がおります」

    まさか

    「私はこの六眼の力を恐れ、隠し、人々の為に使って参りましたが、その人間は違うようです」

    「捻れちゃったか」

    「己の力を過信し、溺れ、自分こそが五条家当主に相応しいと考えております」

    「まぁ無理だろうなぁ」

    悟の両目の六眼にかなう人間などいないだろうという話は聞いているが……。

    「その人間は、私よりもずっと強い呪力を持っています。私には術式がありませんが、その人間は持っている。それが捻れた原因でしょう」

    「無下限術式を持ってる?……んなバカな」

    「術式を持つ片目の六眼による現五条家の転覆が私が見た未来でございます」

    「千里眼の見た未来は絶対……か」

    悟が天井を仰ぐ。

    「他に何か見えたか?」

    「いいえ。しかしこのままでは口に出すのもおぞましい未来が待っているだけです」

    「分かった。ありがとう。いくら払えばいい?あ、カード使える?」

    「お代は結構です。私も歳をとり、そう長くないことも分かっていますがこれでも五条家の人間です。この命が尽きるまで、最期くらいは五条家に仕えさせてください」

    「助かる。連絡先は実が知ってるんだよな?」

    「うん。大丈夫」

    「会えて良かった。来る時はばんばん呪力飛ばして悪かった」

    「え?なにそれ?」
    あの気圧された感覚は桜子さんに向けたものだったのか。

    「六眼から牽制を受けたのは初めてでしたが、同じ六眼ですので問題ありませんでしたよ」

    「んー。やっぱりそうか。また話ししにきていい?」

    「この店はもう辞めます。いつでもわたしが本家に伺いますよ。」

    「頼む。こうなると実を家から出したくないから助かるよ」

    「え」

    「実、帰ろう」
    悟が私の手を取って立ち上がる。

    「え、あ、うん!桜子さんありがとうございました!」

    桜子さんは笑っていた。



    「現五条家の転覆ねぇ。千里眼が見たならそうなるんだろうなぁ」
    家について、私の部屋にいた。

    「悟?大丈夫?」

    「うん?どうだろ?決まった未来を教えられるって不思議なかんじだな」

    「桜子さんは結末は同じでもその過程は変えられるって言ってたよ」

    「ふむ……」

    珍しく悟が考え込んでいる。

    「実」

    「なに?」

    「五条家は最悪光が生きてれば大丈夫だからそこは心配してないんだ。光は海外にでもしばらく行かせる。当主交代の儀式があるから親父には残ってもらうけど」

    「最悪って……」

    「大丈夫。俺は負けないし実も守る」

    「……でも……」

    「なぁに?!俺の事信じられないの?俺より千里眼を信じるの?」

    「もちろん悟を信じてるけど、千里眼は外れないっていうし……」

    「俺と実だよ?」

    「うん?」

    「運命だって変えられるよ」

    まっすぐな悟の眼差しに力が抜ける。

    「そうだね。変えよう」



    悟は知らない。
    私と桜子さんがいくつか嘘をついていた事を。

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