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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    53話目です。忘れてたから深夜にこっそり。

    53私は悟に常に眼鏡をかけるようにと言われて眼鏡をかけるようになった。
    悟は桜子さんに会いに行った事と聞いた話をパパに報告し、間もなく光は数名の呪術師とともに海外に行く事になる。場所はパパが決め、光が海外に行くことも誰にも言わないという。
    パパと悟は学長に会いに行き、桜子さんの事はふせて五条家に危機が迫っていることを説明し、高専は結界があるから大丈夫だとは思うが、非術師の出入りを厳しく制限して欲しいと申し出た。もちろん私の安全の為だ。
    また、暫くの間悟の任務は軽いもの、且移動に時間がかからない場所に留めてもらえる事になった。

    「うーん。あとは追々かな。気付いたら都度対処って感じでいっか」

    私は一人で通勤する事を禁じられ、悟と一緒に送り迎えしてもらっていた。

    私は時間とともに不思議と気持ちが安定してきた。決まった未来を教えられたところで、未来は未来でしかなく、現在はほぼほぼ普通の生活を送っているからだろう。
    それでも桜子さんに言われた「後悔を少しでも減らす」を実践し始めた。

    普段の生活と仕事を大切にし、今まで以上に頑張った。悟、パパ、光をはじめ、周りの人達にはすぐに言葉で気持ちや感謝を伝えた。札幌にいる両親にも頻繁に連絡をした。

    そして、悟には事あるごとに「好き」と「愛してる」を伝えてスキンシップをとった。悟ははじめ大喜びしていたが、そのうち静かに抱き締めてくれるようになった。何か感じていてのかもしれない。


    「悟。お願いがいくつかあるんだけど」
    夕食後に悟の部屋で寛いでいる時に私は切り出した。

    「どしたの。改まって」

    「うん。思ったんだけど、やっぱり私も自分の身は自分である程度守れた方がいいと思うのよ」

    「それで?」

    「黒いバリア……使っていいかな……」

    「今できる?」

    「どうだろう?本当にあの時からやったことなくて」

    「やってみて」

    私は当時の事を思い出しながら手のひらをじっと見つめ、黒いバリアをイメージした。体の芯が冷たくなってくる。当時もこんな感じだったんだろうか。

    「……っつ!」

    悟の声にはっとして顔を上げる。
    悟の手が赤い。
    血……???

    「……悟?」

    「問題ないよ。反転術式ですぐ治せるから」

    眼鏡をかけているので青白いオーラが悟の右手を包んでいるのが見える。
    オーラの中の悟の指がボロボロだ______

    「悟!!!!!」

    私は悟の手を取ろうとしてすぐに手を引っ込めた。

    「黒いバリア消えたよ。もう触っても大丈夫」

    「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

    私は悟の手を取った。
    少しずつ指が再生していく。

    「不用意に触ろうとした結果だから俺が悪い。びっくりさせてごめんな」

    私はお腹の底から震えている。
    歯がガチガチいう。

    「悪かった。無限も解いてたし、想像より強烈だっただけだから。俺が甘かった」

    「バカなことしないで!!このバリアは悟しか知らないんだよ?!どんな威力があるかもわからないのに!!」

    「だからだよ。実、もう一回できる?今度は無限使うから」

    「……無理!」

    「自分の身を自分で守りたいなら、自分の力を知らなきゃダメだよ。」

    「悟だって怪我したら痛いでしょう?」

    「まぁ痛いけどね?俺の呪力量は他の術師とは桁違いだから指が持っていかれたけど、他の人間ならここまでの傷は負わないと思うよ」

    そう。私は悟の負担を少しでも減らしたくて黒いバリアを使おうと思ったのだ。

    「ほら元通り」

    悟はすっかり元に戻った右手をヒラヒラさせた。

    「大丈夫だからもう一回やって」

    私は同じように右手に集中して黒いバリアを出したが、先ほどより手を高く、自分の目線まで上げて悟の挙動も見えるようにした。

    「うん。黒いね。触るよ」

    ゆっくりと悟の手が近づいてくる。

    「実、大丈夫だから集中して。バリア消すなよ」

    目を瞑ってしまいたかったが、私は悟の指先を見続けた。

    悟の指先が私の指先に触れる。

    「おお。やっぱり」

    ぎゅっと手を握られる。

    「え?なんで……??」

    「前に実が無限を通過しちゃうって言ったの覚えてる?逆も有るだろうなって思って。まさか無限がないと弾かれるとは思わなかったから指がもっていかれそうになった時はちょっとびっくりしたけど」

    ケラケラと笑う。

    「よく分からないけど……とにかくなんともなくて良かった……」

    ヘナヘナと崩れ落ちそうになるのを悟に抱き上げられる。

    「あとのお願いは何かな?」

    「あぁ、今はもういいかな……心臓止まるかと思った……」

    「オッケー。とりあえず黒いバリアは出し入れ簡単そうだけど危ないから緊急事態用にしといた方がよさそうだな」

    「本当にあの時悟が触らないで怒ってくれて良かった……」

    「あはは。なんかセンサー働いたんだろうな。触っちゃいけないって」

    「なんか……どっと疲れちゃった……」

    私たちはソファーに座った。

    「ねぇ悟?」

    「んー?」

    「さっきの黒いバリアなんだけど…ごめんね?」

    「なんで謝るのさ。やってって言ったの俺だし、勝手に触ろうとしてミスったのも俺だよ?」

    「そうじゃなくて…悟を弾いたの初めてだったから。その……傷ついたんじゃないかって思って」

    「あぁ、びっくりはしたかな……でも傷ついたとは違うなぁ。むしろ黒いバリアがちゃんと実を守ってるって分かって安心したけど」

    「そう……。それならいいんだけど」

    「俺は実の方が心配だけど」

    「……?」

    「自分の力で人を傷つけたの初めてだろ?」

    「……うん……」

    「大丈夫か?」

    「多分……大丈夫じゃない……」

    「でしょ?実は完全に善人だからなぁ」

    頭をわしわし撫でられる。

    「悟は善人じゃないの?」

    「俺は相手が自分の敵だと判断したら冷酷になれるよ。きっと実はなれない」

    「なれないと思う……」

    「実のいいところで心配なところのひとつだね」

    「そっか……ん?他にもそういう短所と長所みたいなのある?」

    「あるよー!知りたい?」

    「知りたい!悟がなんでこんなに大事にしてくれるのかすっごく不思議なんだよね」

    「不思議って……実は自分を過小評価しすぎ」

    「悟がいろいろすごすぎるのよ……」

    「不器用なくせに人の心配ばっかしてる」

    「ぐぬ……」

    「実の体で俺が見たり触ったりキスしたことない場所なんてどっこもないのに未だに見られると恥ずかしがったりするのも可愛いし」

    「それは仕方ないでしょ……」

    「自分がどんなに辛い思いをさせられても、赦して受け入れられる懐の深さと広さは心配だけど昔から実の一番尊敬できるところ」

    「……凪ママの事……?」

    「じいちゃんの事もね」

    「私は二人に会いたいよ……」

    「うん。分かってる。俺の事を考えて言えなかっただけだよな」

    「…ママに会いたいよ…おじいちゃんは死んじゃたったけどママは生きてる……ママはママだよ…私たちを一生懸命愛してくれたママだもの……」

    唐突に涙が溢れてきた。

    「分かってるよ……」

    「ごめんね悟。わがままでごめんね」

    「全然わがままじゃないよ。これがわがままだとしとら、実にわがまま言われるの初めてじゃない?」

    悟の両手が私の顔を包み込んで親指で涙を拭う。

    「もっと言いたいこと言っていいし、甘えてくれていいんだよ。実の性格上難しいかもしれないけど、俺はちゃんと受け止められるよ?」

    「……ママに会いたいの……それがもう1つのお願いなの……」

    「分かった」



    私が泣くと悟はいつも抱き締めて頭を撫でてくれる。私が泣き止むまで、ずっと。
    昔から悟を泣かせるのはいつも私なのに、これからは悟を泣かせても抱き締めてあげられないと思うと胸が痛かった_____。



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