フェス衣装ジュナカル 扉に触れたサンドバッグはほとんど音を立てなかった。空っぽだったから。25時が近くなり待っていたアルジュナも待ち望まれていたカルナも殊更静かに向かい合い、シミュレーションルームに鍵をかけた。まだなんの設定もしていない部屋の中央に煌々と照明が灯り、その手前に位置する二人を影へ囲う。手袋は光沢を帯びていた。机上に置いていた包みを取り上げ、無言のままカルナへ差し出す。と、むしろ言葉を伴った方がこの場には最適だと思い直し、「これを」とアルジュナは言った。差し出された箱にちらと目を止めて、カルナが赤いグローブを脱ぐ。
「すまん」
「ん?」
「オレはお前へのプレゼントは用意していない。……いや、用意はした。すでに渡したが、それはサンタとしてだ。が、お前のこれはそういう意味のものではない……違うか?」
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