[3/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 煌びやかな内装、気後れしてしまう社交場独特の空気。チップは卓に積み上げられ、メダルは穴に飲み込まれていく。
前髪を片側だけ上げ、白黒の正装に身を包んだ、常と異なる印象のエースはしかし、中身はまるきり普段と変わらぬことを主張せんとばかりに分かりやすく拗ねてみせた。
「全員集まる時期になるまで会いに来てくれないなんて、薄情だよな~」
「だから、何回行ってもあなたがたまたま領土に居ないだけなんだってば」
サイドテールの毛先を胸元で弾ませ、アリスもまた正装に似合わぬ幼い態度で言い返す。
頭一つ分以上高い位置から、エースは彼女の顔を探るように覗き込む。
「敢えて俺が出掛けているタイミングを狙って来ていたりして」
「もう二度と遊びに行かなくても構わないって意味に取るけど?」
「冗談だって」
両手を挙げてにこやかに笑うエースに対し、不機嫌なら不機嫌そうな表情をしてくれたら良いのにとアリスは肩を怒らせた。顔ではなく心中を良く観察する必要がありそうで、面倒極まりない。
一気に短く息を吐き、アリスは握り拳から力を抜いた。
「とにかく今。『今』、せっかくこうして会えたんだし、何か一ゲーム遊びましょうよ」
変えられぬ過去よりも、建設的な話をしようと言葉を強調したアリスに、エースは満足そうに歯を見せて笑った。