[13/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス「我ながら冴えてる。狼煙を頼りに進めばいいんだわ」
「お。君も随分と俺のことを分かってきたね」
狼煙、もとい焚き火の煙を目指して森の中に姿を現したアリスを見て、エースは嬉しそうに薪を打ち鳴らした。
「これ、たくさん作ったから、あなたにもお裾分け」
アリスは手提げから簡易の包装を施したスコーンを取り出す。水色の細いリボンで留められた、中身の見える透明な袋。焼き色に個体差はあるが、大きさが全て揃っているあたりに彼女の真面目な性格が現れている。
「うわ、今ちょうどお腹ぺこぺこだったから助かるぜ。それに君の手作りなら、美味しいに違いない」
「以前の私の実力がどの程度か分からないけど」
食べる前から期待値を上げられては困ると予防線を張るアリスなどお構いなしに、エースは手早く折り畳みのテーブルを広げた。
「アリスも食べていくだろ? お茶を淹れるよ」
「ありがとう」
既に黒の領土の人々との団欒を済ませていたアリスは、八分目まで満たされた胃を抱えながらも笑顔で誘いに応じる。
多少の無理をしてでも。せっかくの好意に、甘えたいと思った。