Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    Kuon_ao3

    @Kuon_ao3

    覚え書き、感想まとめ等に使いたいなと思ってます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 44

    Kuon_ao3

    ☆quiet follow

    短期集中連載、毎日更新で♠黒発売前日に完結予定です。

    #ハートの国のアリス
    aliceInTheCountryOfHearts
    #スペードの国のアリス
    aliceInTheLandOfSpades

    [1/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 見上げた空は青く、澄み切っている。ちぎれ雲が浮いているが、空気は乾いているため雨は降りそうにない。
     いや、そもそも雨は降らないのだったっけ、と。余所者の少女は白の領土で受けた山のような説明の中からぼんやりと思い出す。四つの領土については聞かされたが、時間帯や天候についてまで話していたか定かではない。空っぽの状態に近い脳内にとんでもない量の情報を一気に詰め込まれた少女は、心なしか重くなったような気のする頭を抱え、頼りない足取りで小道を往く。
     まずはどの領土から回ろうか、分かれ道で思案する彼女の視界の片隅。林道に相応しからぬ鮮やかな赤に、思わず目を奪われた。
     すらりとした長身に、茶髪。携えた金の大剣が無かったとしても、鍛えているのが分かる逞しい背中。彼もまた、良く晴れた青空を見上げているようだった。鳥か、真昼の月か。少女も同じ方角を見てみたが、これといって特筆すべきものは視線の先に無い。
     ゆっくりと振り向いた彼は、ぱっと顔を輝かせて歩み寄る。
    「やあ、アリス! 同じ国に配置されて嬉しいよ。君もこの国を探検するところ?」
     知人に対するその言葉遣いに対して、少女は何度目か分からぬ罪悪感を覚えながら控え目に切り出す。
    「ごめんなさい、私、その、この世界や出会った人達のことを忘れてしまったみたいで」
    「ああ、記憶喪失なんだ? うんうん分かった、それじゃあまた自己紹介から始めよう」
     既に出会った他の住人と同じように。忘れてしまったことを責めるでもなく、彼は姿勢を正す。

    「はじめまして、俺はエース。ハートの騎士だ」

     昼の空に良く似合う、底抜けに明るい笑顔が。瞼の裏に焼け付く程、印象に残った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works