[18/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 花を摘む、煤色の手袋。
白い可憐な花、紫の上品な花。野原に咲く、名前も知らぬ花々を摘んで、束ねていく。
背丈の低い花の束はやがて、コサージュ程の大きさと量になった。エースは左の胸の、自身の時計に重なる位置にあるポケットから、細いリボンを取り出した。
それはあの、彼女から貰った差し入れの口を結んでいた、水色のサテンのリボン。捨てられなかった、思い出の一部。
ポケットを漁って指先に当たる度に蘇る。
持っている限り何度でも思い出してしまう。
離れている間に、募ってしまう。
故にエースは、一度手放すことにした。彼女に預けて、選択を、二人の行く末を、委ねる。
鼻歌混じりに野の花をリボンで束ね、エースは最後に蝶結びを施した。