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    rani_noab

    @rani_noab
    夢と腐混ざってます

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    rani_noab

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    すべての男オペレーターを抱くタイプの弊社博にした。
    博♂銀(正妻)な感じです。
    炎との問答。

    問答地下3F区画の何の変哲もないベンチに座り、タブレットを横に置いてカノは背もたれに寄りかかっていた。
    ここでは煙草は吸えないが、この先の部屋はまだ整理前なため人の通りもなく、一人で思考に没頭するにはちょうどいい場所だった。
    カノがどこにも見つからない時、大概ここにいることを知っているのはケルシーとアーミヤくらいなものだ。そして他のオペレーターはおそらくカノが何時もの場所にいないとき、無理に探し出そうとするものはない。急な用事であればPRTSに連絡が届くので、不自由を感じていない。
    タブレットに目を通してないのは、もう必要な情報は把握し終えているからだ。必要なのは頭脳労働であり、そして急を要していないが、考えなければならないことがカノにはたくさんあった。
    「ここに居たのか」
    声を掛けられてもカノは振り向かなかった。こう考えた直後に、暗黙の了解を破るようにしてやってきた男。
    足音が聞こえたので驚きはしなかった。この男の事だ。わざと足音をさせていたのだろう。
    カノの前に立ったエンカクに、そこでようやくカノは顔を上げる。
    「何から逃げてきたんだ?」
    黒髪の下のまなざしは鋭利さを持ちあわせ、その整った顔だちに挑発的な笑みを浮かべれば、危険な印象の男が出来上がる。そしてその印象は間違いなどではない。
    「何の話だ」
    「お前がここに居るときは何かから逃げてる時だ。違うか?」
    何をもって逃げていると称するのか、その定義は分からないが、カノにはわずかにその自覚がある。
    だが、それを悪いことのような言い回しをするエンカクを取り合う気はない。
    「決めつけている相手に何を言っても無駄だろう。あなたと問答をする気はないな」
    「つれないところは相変わらずだ。お前の記憶がないことを時折、妖しいと思うことがある」
    「なかったらこんなに念入りな復習はしない。ある意味じゃ二度手間だ」
    隣に置かれたタブレットのすぐそばに手をつけば、エンカクは首を傾けた。
    「どうすればまともに取り合う?」
    「チェスに変えてたら考えよう」
    「自分の土俵に引きずりこむわけか」
    楽し気なエンカクの声は、カノを吟味するような響きもあった。エンカクと顔を合わせてから、エンカクに何かを期待されているような感覚をたびたび覚えるが、記憶がない今、心当たりもない。
    「基本だろう。会話を楽しみたいなら日を改めてくれ。これでもシミュレーションに忙しい」
    「様子を見に来たんだ。あの男が来たって聞いたからな」
    カノはあの男が誰を指すのか分かってしまい、返事に一瞬の間があく。するとフェイスガードでこちらの表情は見えていないだろうに、エンカクの唇がまた吊り上がった。
    「エンカクが誰かを気にすることがあるなんて思わなかったよ。そんなにあなたにも気になる男なのか?」
    「俺にも?」
    言葉尻を取り上げられてカノは肩をすくめた。カノも気になっているという意味に取られたようだが、表情を見るとどうやら意地悪を楽しまれているらしい。
    「それよりはお前の俺の評価のほうが気になるがな。今のお前に俺はどう映っている?」
    フェイスガード越しに目が合っている。エンカクにもその感覚があるだろう。奇妙な沈黙が落ちて、エンカクはゆっくりとした迷いのない動きでカノのフェイスガードに手を伸ばしてきた。指をかけて適切な力を籠めれば、カノの表情がエンカクにさらされる。
    「目をそらさないな。お前は」
    フェイスガードに触れた指先は、カノの表情を暴こうとはしなかった。
    煙草が吸いたい、とカノは思う。口元が寂しい。
    「エンカクにとって死とはなんだ?」
    「また唐突だな。敗北だ。俺がここで求めるのは死合いだからな」
    「私にとっての死とは、思考を止めることだ。私はあなたのように何の武力も持たない。あなたが気まぐれに首に手をかけるだけで簡単に死ぬだろう。でもあなたは私のことを認め脅威とも見ている。そうだろう?」
    「ああ、違いない」
    エンカクは滑らかに話しだしたカノの言葉をじっと目を合わせたまま聞いている。フェイスガードをその指先がなぞる。
    「私の戦場は私の頭の中だ。思考を止めた時、それが私にとっての終わりとなる」
    エンカクの指先が離れていく。
    「タイムアップだな」
    そう言ってエレベーターのある方向をみやったエンカクに、顔を上げたカノは、いつの間にかそこにシルバーアッシュが立っていることに気づいた。いつから聞いていたのか表情から読み取れない。見ればこれだけ威圧のある男なのに、足音一つさせないなんて、その種族の通りにしなやからしい。
    「久しぶりに戦場以外で面白かったよ。またお前のそういう話を聞きたいものだな。次はチェスの相手でもしてもらおうか。俺にお前の戦場をみせてくれ」
    言いながらカノの前から立ち去って行ったエンカクを見送り、カノはコートの中のシガーケースを思い浮かべる。
    どういうわけか、表情が隠されていて助かったとカノは思った。
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