肺の違和感に数回咳き込む。ここで治療を始めて数ヶ月経つが、未だに外に出たままの生活は慣れない。行動も制限され、ついこの間まで勤しんでいた野球とさえ隔離されている状況だ。溜息をつく。季節は夏から秋にすっかり移り変わり、近くに見える山が赤く染まっている。倦怠感が自分の体を支配する。ベッドで横になっていれば思考も彼方へと飛んでいくのも必然で、この状況とは全く関係のない事ばかり思案していた。
治療法も確立していない結核にかかる者の行く末など、たかが知れている。もう何度目かもわからないくらい、再度溜息をついた。それほどに、気分は曇っていたのだ。
もう夜だというのに眠れないという事実もまた、自分を悩ませる要因の一つだった。鈴虫の音がそぞろに聞こえてくる。もうそろそろ観念して目を瞑ろう、と思った時。
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