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    pwpk89

    @pwpk89
    主人公の絵………………………

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    pwpk89

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    AIのべりすとに創作サクセスの小説書かせてみた。AIってすごいね……

    肺の違和感に数回咳き込む。ここで治療を始めて数ヶ月経つが、未だに外に出たままの生活は慣れない。行動も制限され、ついこの間まで勤しんでいた野球とさえ隔離されている状況だ。溜息をつく。季節は夏から秋にすっかり移り変わり、近くに見える山が赤く染まっている。倦怠感が自分の体を支配する。ベッドで横になっていれば思考も彼方へと飛んでいくのも必然で、この状況とは全く関係のない事ばかり思案していた。
    治療法も確立していない結核にかかる者の行く末など、たかが知れている。もう何度目かもわからないくらい、再度溜息をついた。それほどに、気分は曇っていたのだ。
    もう夜だというのに眠れないという事実もまた、自分を悩ませる要因の一つだった。鈴虫の音がそぞろに聞こえてくる。もうそろそろ観念して目を瞑ろう、と思った時。

    「ちょっと、寝ちゃってるの。」

    聞き慣れた声が頭上から降ってきた。

    「──ヒメ。」

    「どう。元気?……では、無いわよね」

    彼女はバルコニーと同じくらいの高さの金木犀の上に佇んでいた。初めて会った時の投球の腕といい、どこか彼女は変わっている。どうやってこんな山の上に身一つでやってこれたのだろう。彼女には謎が多い。

    「すっごい間抜け面。ま、何も聞かないでよね、私にも秘密ってものがあるのよ」
    「うん、いいよ別に。話したくないのなら、いいんだ」
    「……もう、あんたはあいも変わらず無関心ね」

    そういうつもりでは、ないのだが。
    着物姿で枝に座る姿は、月光のせいだろうか、やけに眩しい。彼女の短髪が揺れる。
    そういえば、彼女の短髪も自分の言葉によってもたらされたのだったな、とふと思い出す。なんとなく、短髪の方が似合うかも、と零せば、翌日には長かった彼女の髪は嘘のように短くなっていた。

    「着物、着てみたのよ。ほら、あなた着物姿見てみたいって言ってたじゃない──どうかしら」

    「……うん。似合うよ、ヒメ」

    「ふふ、お世辞かしら」

    穏やかに微笑む彼女。中華民国との戦いが始まってからは、近所で到底見る機会が無くなった着物姿だ。友人も戦場へ赴いてしまったし、顔も長らく見れていない。
    ここ最近で見れなくなったものが、多過ぎる。

    「ヒメ」
    「ん?」
    「ほんとに、きれいだよ」

    そう告げれば、彼女は俯いたあと自分から顔を背けてみせた。睫毛が長いなぁ、とどこかずれた思考をしつつ、彼女の仕草一つ一つを見つめていた。

    「……ほんと、上手いのね」
    「嘘なんかじゃないよ」
    「私を照れさせてそんなに楽しい?」

    楽しい、とは若干ずれている気はするが──彼女が己の言葉で表情を変える、というのはなかなかに嬉しいような、くすぐったい気持ちになる。こんな状況であるせいか、言葉は止まるどころか零れてくる一方だった。
    「ねぇ、ヒメ」
    「…………」

    返事は無い。ただ風が吹き、葉擦れの音だけが耳につく。それでも構わず続けた。

    「俺さ、思うんだよ。この戦争が終わったら、みんな死んじゃうんじゃないかなって」
    「……えぇ」
    「だって、結核なんて治せない病気だし、治療法もないんでしょ?戦争が終わった後にはきっと俺の居場所はないよ。それこそ、隔離されるだけだと思うんだ
    ……まあ、俺の末路なんか戦争が終わる前に分かってるようなもんだけど」

    彼女は黙っている。金木犀の葉が風に煽られて音を奏でる。

    「だからさ、ヒメ」
    「俺は今のうちに死んでおきたいな、と思うんだけど。どうしたら良いかな。」

    沈黙が流れる。

    彼女は少しの間何かを考えているようだったが、やがてこちらを向いて口を開いた。

    「……あんたって、本当に馬鹿ね」
    「あはは、ひどい言われようだなぁ」
    「ばーか。」
    「でも、そうかもね」

    彼女は笑わない。真剣な眼差しを向けてくる。その瞳の中に映る自分は、どこか弱々しく見えた。

    「死ぬのなら、もっと上手くやりなさい。こんな、誰にも看取られないのは駄目よ」
    「……うん、わかってる。」
    「ちゃんと生きて、そしていつか死になさい」

    わかったわね? そう念を押されてしまえば、もう自分にはどうしようもなかった。彼女の言葉を咀砕するように、何度か反駁する。

    「──そっか、そうだよね。ありがとう、ヒメ。」
    「ふ、別にいいけど」
    「じゃあさ、また会いに来てくれる?次は俺の方からそっちに行くよ。」
    「あら、楽しみにしてるわ。」

    金木犀の花が舞う。月光が彼女を照らしている光景は、まるで一枚の絵のように美しい。

    「じゃ、もうそろそろ帰ろうかしら。あなたもちゃんと寝なさいよ」
    「……ヒメ」
    「何?」

    そっと手を伸ばす。彼女の頬に触れる。彼女は拒まない。そのまま輪郭に沿って撫ぜていく。指先が首筋まで辿り着く。
    彼女は目を細めてされるがままになっている。
    そのまま、自分の手を離した。

    「なんでもないよ。おやすみ」

    「おやすみなさい、いい夢を見てね」

    「うん、ありがとう」
    布団に深く潜る。彼女が月光に溶けるようにして消えていったのを見届けてから、ゆっくりと瞼を閉じる。
    今日はよく眠れそうな気がした。
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