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    20210726 寝ンガとうっとり之介 自然に人攫い ご機嫌なところも好きな子相手に煩悶してるとこも見たうえで愛之介様は素晴らしい方だな…て思えるから忠はすごいよ

    ##微妙
    ##全年齢

    我が偉大なる主人について 命じられ早数分。そろそろ止めがかかるかと思いきや。
    「何分だろうと見ろ。記憶に、いや魂に刻め」
     抑え気味の美しい声に無茶な台詞を乗せる主人はいたって真剣。大袈裟なまでの警戒からはこの空間を壊したくない執念を感じる。もう一度見ろと訴えた声もまたひそひそと微かであったが、そこには万感の喜びが。
    「何か言ったらどうなんだ」
    「よく寝ていますね」
     違う、と振られかけた首が中ほどで停止する。瞬間「……ん……」彼の腿上から小さな鼻に掛かった声が。
     先ほどから薄色をゆるく揺らしていた少年は今や天井を向き、丁度照明と顔を合わせていた。さっと手をかざした主人の意を汲み急ぎ照明を消せば声は止み再び規則正しい寝息が部屋に響きだす。
     主人はしばらくの間少年を起こす気はないらしい。それはつまりこの緊張状態を自分達が続行しなければならないことを意味するが、珍しい寛容さをもってそれを受け入れるつもりでもあるようだ。
     横で眠らせていたのが偶然その膝に倒れ込んだだけとはいえ、すやすやと眠りこける少年を見ては身を震わせ──あくまで例えであり実際には瞼程度だが──このうえない喜びに浸る主人は、少年が目覚めるまでの僅かな時間を心行くまで堪能したいとそう思っているのだろう。
     しかし当然いつものように触れ合い欲を満たしたくもあるようで、今はカーテンの隙間からうっすら差し込む自然光に照らされた水色を取るか否かの距離で手を沿わせている。
    「……眠っている。僕の膝で、彼が……」
     噛み締めるような主人の声音も指先で髪の表面数ミリ先をなぞられていることもつゆ知らず位置が悪いのかソファに寝そべる身をゆるゆる動かす少年が主人の恋人筆頭候補である事実は主人と自分他はせいぜい数人程度しか知らない機密事項だ。とはいえ、俗世はともかく彼の楽園において主人は少年への好意を一切隠しておらず、明け透けな振る舞いはその執着を来訪者達に理解させるのに充分すぎるほど……の筈なのだが、どうにも察しの悪い来訪者達はあまりに堂々とした求愛行動をパフォーマンスの一貫としてしか認識出来ていないらしい。誤解に近い捉え方は有象無象だけでなく他ならぬ筆頭候補にまで広がっていた。少年の鈍感さと主人自身の博愛的な振るまいがきれいに噛み合った結果、彼の恋路は恐ろしいほどの難易度に化けたようなのである。
     らしくもない初々しいアプローチをし少年の一挙一動に惑う主人の姿に何度心の中で涙を流したことか。そんな健気さに気づかずぼんやり空など見る少年の態度を腹に据えかね愛之介様は君の事を愛しているのだから何か返したらどうなんだと言いに走ったことも、察知した主人にそれを阻止されたことも一度や二度ではなかった。
    「おめでとうございます」
     だからこそまあ自分もこの光景に思うところがないわけでは無い。意見を言うのは憚られるので祝福程度に留めておくが。
     一ヶ月と数週間、そう言えば決して長期間では無いように思えるが、何せ毎日だ。これは主人が暇さえあれば少年の元に向かい言葉を交わし感情を伝えを繰り返し繰り返しようやく縮まった距離なのである。無表情無反応なだけで存外主張の強い少年を相手にこれは快挙ではないだろうか。
     しかし油断は禁物だ。未だ少年はこの生活を完全に受け入れたわけではないのだから。
     それにしても、学校には普通に通えて望めば多くは叶う。この快適な生活の一体どこが不満なのか。自分には理解できない。
     正直に言ってそれら含めた少年の意思を根こそぎ奪った方が話が早いと自分は思うのだが、生憎主人はそうではないらしい。何もかも与えた上で自分を選んでほしいのだとか。奪うより余程困難な道に思えたがそれくらいの方が燃えるだろうと笑われてはこちらから言えることは何もない。主人が敢えて茨を掻き分け続けるというなら自分はその横で傘をさすなりハサミを持つなりするだけだ。
    「神は良い仕事をした」
     飽きることなく少年の髪を、頬を、まつ毛の縁をなぞりながら主人は語る。
    「だがここまで僕の理想の愛を具現化してみせるとは、よほど僕に愛されたかったのだろう」
     自分は神に愛され神を愛すのだと真顔で言える人間がこの世にそう居るだろうか。これこそ社会の荒波に揉まれるどころか海ごと割断しに掛かる男、偉大なる主人の一端であった。
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