初見です。いつ見ても可愛いですね 今度は何かと尋ねれば差し出されたスマートフォン。自分の顔も画面ひとつ通すと知らない人のようだ。くしゃっと目を閉じていてどことなく情けない。
「可愛いだろう」
いや全然。
同意が欲しかったわけではないようで「見て」答えるのを待たずに三角のボタンを彼が押せば途端画面が切り替わる。動く自分、跳ぶ自分、派手に転んで、再び先程の顔。ああ思い出した。大分痛かったあれだ。明るいし暦とMIYAも居るからこの前皆で練習したときで多分確定。
そういえばあなたは居なかったねなんて気軽に言える雰囲気は、しかしこの場に無い。愛抱夢はずっと、なんというかむす……っとしている。
「君のこの表情も転び方もまだ僕は直接見ていないんだが」
「見せなきゃだめ?」
「だぁめ」
一文字ずつ強調する程駄目らしい。
けれどそれは別に見せるものでもなく、見て欲しいとも思わないシーンだ。彼に見せるならしっかり練習してから風の下でが良い。成功した瞬間の少し悔しそうな笑顔、好きだから。
「恥ずかしいだけではないと?」
それもまあある。あとは、
「いいから見せて。その恥ずかしがる顔ごと僕に全部」
こうなるから避けたかったのも本当。一度知ったらこの人絶対全部報告させたがるし最悪上映会まで始めるから。自分が大きくコケる姿を巨大スクリーンで見せられる悪夢なんて眠っていても見ない。
「良いね、少し嫌そうなのがまた擽ってくる」
「何を?」
両手で頬をおさえられればそうする他なくきらきら輝く赤目と真っ向から目を合わせてしまった。「君の恥じらいは貴重なんだよ」知らないし。
「スケート絡みでも中々見せないがそれ以外になると滅多に出てこない」
「見せてるだろ」
その滅多をおそらく独占している男、自分が自分なりに色々と口に出しにくい箇所まで見せたつもりの男は大きく頷き、
「勿論君を今すぐ卒倒させられるあれやこれも大事に保管してあるが……わかるだろう?それだけで満足なんて僕は出来ない」
一息に告げた言葉はあまりに堂々としていて、なのでついうっかり納得しかけた。危なかった。
良いも悪いも好きも嫌いも見せたい部分もそうでない部分も何もかも手に入れないと嫌。そんなのわがままにも程がある。言う彼も変なら、受け入れる自分も変だ。
「じゃあ見せるけど」
言葉の続きを少しだけためらった理由は自分でもよく解らなかったが。
「可愛くなくてもがっかりしないでね」
「……大丈夫。あり得ないから」
あり得ないらしいので、良い。