わくわく欲々肉ぱくぱく よく知らない人にご馳走になる肉は本当もうすっごくこれからしばらく肉って字見るだけでお腹鳴りそうなくらい美味しいけど、飲みこむ度胃の中のもやもやを膨らませてくるのは少し問題だ。
いきなり車に乗せられてびっくりしていたとはいえ何で数回頷いただけで焼肉屋へ連れて来られたのか。向こうの奢りになっているのも含めて全く分からない。
本音としては半分嬉しくてあと半分は困るとか悪いなとか、とにかくあんまり良い気持ちでは無かった。だってこんなのどんな顔で受け取ればいいのだろう。何だかんだ向かいの人と一括りにされる事が多くなってすっかりその気になっていたのをちょっとだけ恥じる。いくら同じ速さで同じ風を浴びて、結構仲良くなれたと思っても、一食にかける金額から自分達はまるで違うのだ。
そう思うとまたもやもやが。さっきから何なんだろうこれ。もう少し深く追って正体を見極めたいような気もするけど。
「おや、箸が止まっているね」
これだ。さっきから食べるのを止めると入るチェック。
「遠慮なんて君らしくも無い。ほら。これと、ああこれも……」
そしてこの肉と野菜とサイドの供給をされたなら、もう考えるなんて無理だった。美味しいかと問われておいしいと返せば向かいの人も微笑んで食事を再開する。とはいえこちらの半分ほども食べないですぐ話し出したが。自分が今食べた部位はどう身体に効くと含まれる栄養の話とか。それが異様に詳しいので未だ知らない彼の職業は栄養士なのかもしれないと甘みと塩気でぼやけた脳が予想立てた。
「ふふ」
覆われた口元からこぼれた笑いをただ不思議だと思う。食事中もしくはその終わりにしてはどうにも穏やかではなかったから。むしろこれから始まる何かを待ちかねているような。
期待にらんらんと光る目はこちらへと向けられ続けている。
「ね、ランガくん。沢山食べて。僕が与える全てを君の血肉にして」
「……あなたは」
「僕?僕は良いんだ。君の豪快な食べっぷりを見ている方が楽しい。される側だった時は不快でしかなかったがいやこれ、したくなるのも分かってしまうなあ。癖になりそう……」
「はあ」
「……まあだから、君しか楽しめていない訳じゃない。心配しなくていいよ」
言うどころか見つけてもいなかった不安をひょいと掬ってしまうと「それに嫌いではないから。むしろ好きだよ、待ちきれないくらいだ」そう言って男は顔を傾けた。
「早く食べたいな」
続けて聞こえたビーフの誘いに心の中で息を吐く。そんなことでいいなら簡単だ。素直に食べさせるかはともかくとして。