××××の葬式最京組の組長である金剛阿含の葬儀が行われたのは、春だというのに肌寒い四月のことだった。
数日前、事務所を出て車に乗ろうとした阿含は何者かに銃で襲撃された。最初の一発は腹に命中し、姿勢を崩したところでもう一発。すぐに組員の車で病院へ運ばれたが、医者も手の施しようがなかったという。
葬儀会場である大きな日本家屋の前に高級車がずらりと並んでいる。阿含は恐ろしい男だったが、恐怖による支配や肉体的な強さだけでなく、ただ座っているだけで自然と周りが従ってしまうようなカリスマ性も持っていた。参列者は途切れることなく次々と訪れる。今朝から降り続く細い雨が彼らの喪服の裾を濡らしていた。
そこへまた一人、参列者がやってきた。黒いスーツを着たその男は何食わぬ顔つきで門をくぐり、屋敷の中に入っていく。
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