最悪だ。
今朝起きた瞬間に違和感を覚えてトイレへ駆け込めば、案の定きていた生理。まぁそれは時期的にそろそろだと思っていたので想定内だった。ただ想定外だったのは、このお腹の痛さ。毎月じゃなく数ヶ月に一度襲ってくる、この痛みはいつまで経ってもなれない。しかも数ヶ月に一度だから薬も持ち合わせていなかった。
保健室にもらいに行く? でも身体を動かすのもダルい。机に突っ伏して、腹を擦りながら痛みに耐える。そうやって乗り越えた四時間目、昼休みに突入したからって痛みが引いてくれる訳はない。どうしよう、そろそろ靖友が迎えにくるはずだ。生理で腹が痛いとか、さすがに恥ずかしくて言いにくい。
う~っと唸り声を上げていると、ぱさりと肩になにかが掛かった。驚いて顔を上げると、そこには靖友が立っていて、肩に掛かけられた物は靖友のカーディガン。
「靖友」
「それ、着とけ」
「あ、うん」
言われるままカーディガンに袖を通していると、靖友は前の席へと腰掛けた。正直寒さも感じてたから、カーディガンを貸してもらえるのはありがたい。でも靖友の行動の意味はわからなくて首を傾げて、見つめると机の上にパンが入っているだろう紙袋を置かれる。
「靖友、外行かないの?」
いつも靖友との昼食は屋上や裏庭で、教室で食べることはほとんどない。
「おまえ、調子わりィんだろ」
「え?」
「これ、膝んとこ置いとけ。カイロ代わりにはなっから」
そう言って靖友が渡してくれたのは、温かいココアだ。すっと伸びてきた手が指先を包んで、暖めるように握ってくれる。
「手、冷たくなってる」
指先を見つめていた靖友の瞳が、ふっと上がって顔を覗かれた。
「薬は? 飲んだ?」
「……まだ。って言うか持ってくるの忘れた」
ふぅと息を吐いた靖友が「んなことだろうと思った」そう言って、ポケットから鎮痛剤を出して目の前に出してくれる。
「メシ、食ってから飲め」
言わなくても全部が靖友にはお見通しだったらしくて、さすがに恥ずかしくなってきた。だって彼氏に生理周期どころか、腹痛がくる周期まで把握されてるって……。
何てことない顔で紙袋からパンを取り出して、机へ並べる靖友にどんだけ出来た彼氏ですか! と心の中で突っ込みを入れながらも、顔が熱くなるのを抑えることが出来なかった。