肌寒さに目が覚めた。ゆっくりと瞼を持ち上げ辺りを見渡すと、まだ薄暗くて夜明けにはほど遠いらしい。いくら目を凝らしてもさすがに時計の針を確認することは出来なくて、しかたなくぼーっと天井付近を眺めていた。
しばらくして慣れてきた目に、ぼんやりと物の形がわかるようになって、仰向けていた身体を横へと倒してみる。すぐに丸くて形のいい頭が見えて、こっちを向いていないことに少しの不満と寂しさを感じてしまう。一緒に布団に潜り込んで、眠りについた時にはこっちを見ていたはずなのに。
むぅと膨れながら自分達の間に開いた隙間を埋めるように、そっと寄り添った。ぴたりとあたたかな背中に胸をくっつけて、腕は抱きしめるように前の方へと回す。鼻先をうなじへうずめ、すぅっと息を吸い込む。とたんに身体全部が靖友の匂いに満たされて、ひどく安心した。
靖友のぬくもりと匂いに包まれて、ふわふわと柔らかな眠気が戻ってくる。ひとりで寝ていたら味わえない、とびきりの幸せ。このまま眠りに落ちてしまおうと意識を手放しかけた瞬間、腕の中の靖友が身じろいだ。ふっと抱きしめる力を弱めると、くりると寝返りをうった靖友がこちらへと顔を向けた。
「……なぁに、さむかったぁ」
うっすらと瞼を持ち上げ、舌足らずな口調で尋ねてくる姿が可愛い。
「ん、ちょっと。でも、もう大丈夫だから」
口許を緩ませて、そっと靖友の頭を撫でるとその手を掴まれた。
「んー」
半分寝てるみたいな返事をして、握った手を離し、靖友の手はオレへと伸びてくる。ぎゅっと抱きしめてから、頭をふわりと撫でられた。
「これなら、さむくないだろぉ」
耳元で囁いてから、靖友はオレの額に口づけをくれる。そのまま頭を引き寄せられて、完全に靖友の腕の中におさめられてしまう。
「やすとも」
「……ん」
返事はくれるけど、すぐにでも夢の中へ戻ってしまいそうな靖友に小さな笑いがこぼれる。靖友の首筋に額を寄せて、猫みたいにスリスリと擦り付けた。
「おやすみ」
ふんわりと吐き出した呟きに返ってきたのは、小さな寝息。どこよりも落ち着ける腕の中、オレは今度こそゆっくりと意識を手放した。