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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    高校生荒新でキスの日
    荒北さんはキスが好き♡

     靖友はキスが好き……だと思う。
     なんで、だと思うなのかと言うとオレは靖友以外と付き合ったことがないから、普通がどうなのかを知らない。しかも友達とそういう話をすることも少ないから余計にわからない。
     それでも、靖友はキスが好きだと思う。
     靖友と付き合い初めてキスをした時から二人きりになって、キスをしなかったことなんて数えるくらいしかない。そのほとんどが、靖友から仕掛けられたキスだ。まず目が合えばキスしてくるのは普通だし、小説を読んでいる時に頬へキスされることもある。この間なんか二人でテレビを観ていたら、ふと気づけば手を握られていた。恋人みたいに繋がれた手を持ち上げられ、柔らかく手の甲にキスされた時は、王子さまかよ! って叫びそうになったくらいカッコよかった。
     別にキスされるのが嫌なわけじゃないし、逆に言葉が足りない靖友の愛情表現だと思うと嬉しくなる。だから今まで何も言わなかったし、靖友の好きにさせていた。それがまさか、こんなことになるとは思わなかったんだ。



     いつものように靖友の部屋へ、買ったばかりの小説を持って訪れた。集めているシリーズものの新作を、少し前のめりになりながら読みふける。部屋には靖友が雑誌のページを捲る音と、オレがページを捲る音しか聞こえない。その片方の音が止み、次には衣擦れの音へと変わった。ベッドの上にいた靖友が降りてきて、背中にピトリとくっつかれる。肩の上に顎が乗せられ、後ろから抱き締めるように腹に手が回った。
    「それ、おもしれェの?」
    「うん、シリーズものの最新刊なんだ。靖友も読む?」
    「……いらねェ」
     自分から話を振ってきたくせに、素っ気なく返事されてしまう。軽く振り返ると、拗ねているような表情で視線を逸らされる。今の会話のどこに引っ掛かるところがあったのか、わからなくて首を傾げてしまった。
     もしかして構ってほしいとか? 顔は面白くなさそうなのに、くっついた体も腹に回された手も離れる気配はない。こんな靖友は珍しくて、あまりの可愛さに顔がニヤけてしまう。
    「やすとも」
     後ろ手にそっと頭を撫でて、柔く名前を呼ぶ。そろりと視線が戻ってきて、間近で見つめ合う。
     あっ、キスされる。
     そう思い待ち構えていると、靖友はまたふいっと顔を背ける。それどころか体も離され、ベッドへ凭れるように背中を預けてしまった。いつもと違いすぎる流れに、戸惑っていると靖友がチラリとこっちを見る。
    「靖友?」
     体ごと振り返り、靖友と向き合うように座り直す。床に置かれた手を自分の手のひらで包むように握って、そっと顔を覗き込む。
    「オレ、なんかした?」
     ずっと黙ったままだった靖友の口が少し開いて、すぐに閉じた。左右へうろうろと瞳が動いてから、ようやくオレを見つめる。
    「……おまえさァ」
    「うん」
    「その、……あー、と……オレと」
     こんなに何か言いにくそうな靖友は初めて見た。瞳を伏せまた逸らされた視線に、なんだか嫌な予感がしてきてじわりと手に汗が滲む。
    「……キス、すんのヤなのォ?」
    「へ?」
     全く予想していなかった質問に、思わず間抜けな声が漏れた。オレの聞き間違いかと、靖友を見つめるとスッと視線は外される。
    「あのさ、靖友……なんで、そうなんの?」
    「ア? んなの、てめーがキスしてこねェから……もしかしたら、ヤなのかなって」
     だんだんと小さくなっていった声は、ギリギリ最後まで聞こえた。
     えーと、ちょっと待って。靖友はオレからキスしないから、オレは靖友とキスしたくないんじゃないか……って言ってんのか。そんなわけないだろ! 好きな人とするキスが嫌いなヤツいるか? っていうか、オレがしないんじゃなくて、靖友がしすぎなんだよ。
     一通り心の中で突っ込みを入れてから、改めて考える。だからと言って、これをそのまま靖友に伝えて納得するだろか。いや、しないな。それどころか、人をキス魔みたいに言うな! って余計に拗ねそうだ。だったら嫌じゃないってことだけ伝えるのが無難だよな。
    「オレ、靖友とキスすんのイヤじゃないよ」
     素直な気持ちを言葉にしても、靖友はまだ疑りの視線を寄越してくる。こうなったらと靖友の手を握ぎる力を強くして、そっと顔を寄せた。
     ちゅっ、と軽く音を立て靖友の唇に自分のそれを触れさせる。久しぶりにオレから仕掛けたキス、恥ずかしさに顔が熱くなった。閉じていた瞼を開くと、目の前には靖友の真っ黒な瞳が見える。窺うようだった瞳が、ふっと色を変えて靖友は口角を上げた。
    「しんかァい、こんなんじゃ足んないんだけど」
    「え?」
    「もっと、いつもオレがしてるみたいにしてヨ」
     ニヤニヤと楽しそうに笑う靖友に、さっきまでのしおらしさは見あたらない。あれ、これってオレ騙された?
    「ほら、はやくしろって」
     そう言って瞼を閉じた靖友の顔は可愛いけど、何か違う気がして動けなくなる。
    「しんかーい」
     もう一度、ねだるように呼ばれたら覚悟を決めるしかない。ぐっと顔を近づけ唇を触れ合わせる。
     この後、靖友が満足するまでキスさせられた。慣れないキスで恥ずかしいのに、深いのまで求められ必死で応え、最後は靖友にがっつり濃厚なキスされて頭はとろとろに溶かされてしまった。
     靖友はキスが好きだ。これはオレの中での決定事項になったけれど、その靖友にされるキスが好きなオレは結局、同類ってことなんだろうな。
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    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
    2084

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