あー、くそあっちィ!
サイバーだか、パンクだか知んねェけど、まだあっちィんだって! なんだってこんな厚着させらんなきゃなんねェんだヨ。しかもみんなお揃いってのがもっと訳わかんねェ。つーか、これから何すんだヨ!
心の中でひとしきり文句を言ってから、暑さを和らげよう上着を少しだけずらす。露出した肌にほんのりと風が当たって気持ちいい。ふっ、とひと息ついたところに刺さるような視線を感じた。犯人は目の前に立っている新開で、大きな瞳をこちらへ向けている。
「んだヨ」
しゃがんだまま見上げると、新開の眉が少しだけ下がった。
「靖友、それ……ちゃんと着ろよ」
「あっちィんだヨ」
オレと違いきっちりと着こんでいる新開は、見るだけで暑苦しい。ファスナー閉めて、手袋まで……よく耐えられるよな。
「いや、でもさ……」
「なに?」
すっ、と一度反らされた視線が戻ってきて、新開は目線を合わせるようにしゃがんでくる。
「前から思ってたんだけど、靖友さ……」
そこまで言って、新開は口を閉じてしまった。口を開け、また閉じて、眉は下がり瞳はうろうろとさまよい出す。
「新開、どしたァ?」
顔を覗くようにして視線を合わせ、パクパクと動く唇へ指を這わせた。すると新開はぐっ、と息を詰まらせ、かすかにうつむく。
「……肌、出しすぎ」
「は?」
ポツリと吐き出され言葉の意味がわからず、思わず変な声が漏れた。
「カッコいいよ。靖友はどんな格好しててもカッコいいけどさ……あんまオレ以外に、その、見せてほしくない」
バッと顔を上げ言い出したと思ったら、どんどん語尾は小さくなり同時に顔は下を向いていく。その頬はほんのりとピンクに染まり、瞳は水分を含んでキラキラしている。
――え、なにこの可愛い生き物……。
こんなに可愛い顔、他のヤツに見せたくない。ぐいっと新開のフードを掴み、勢いよくその頭へと被せる。
「うわっ、靖友?」
今すぐキスしたい衝動に耐え、自分の上着を引き上げ着直した。
「これでいーんだろ」
「え、あ、うん。……あの、これは?」
フードを掴みながら首を傾げた新開に、耳元で囁く。
「オレ以外にその可愛い顔見せたくねーの。わかれヨ」
ニッと口角を上げてやると、今度は首まで真っ赤にして新開は大きく頷いていた。
~おまけ~ 手島&真波の会話
「またイチャついてますねぇ」
「真波、それ言うなって」
「ほっとくとすぐイチャつくんですよね。あの人たち」
「イチャついてる自覚がねーんじゃねぇの」
「あはは、確かにそうかも」
「ハコガクも大変だな」
「あー、でも見てると結構面白いんですよ」
「……おまえ、あんま見てやるなよ」
「はーい、気をつけま~す」
(これ、ぜってー気をつけねぇやつだ)