落書き「お前らほんと仲良くなんねぇな」
同じようなことをいろいろな人間に言われる。
しかし。
「もっとこっち来なよ」
ん、とひとつ返事をして、横から縋り付いていた手を離し、座るその膝の上に乗る姿勢になる。正面から首に両手を回して抱きつき、頬を擦り寄せた。
多幸感に包まれる。それは奴も同じようで、擦り寄せた頬を離すと引き寄せてきて唇が重なった。
人にはとても見せられない姿。
仲良くならない、なんて偽りの姿だ。逆なのだ。あまりにも愛し合いすぎて危うすぎる。それが今の俺達の姿だ。外で少しでも触れ合えばこの距離になってしまいそうで、わざと憎まれ口を叩き合い意図的に距離を取る。誰にも気取られなくない。俺たちの関係に誰も立ち入らせたくない。
「……もっかい……」
せがまれる。それに拒否するわけもなくもう一度、今度はこちらから唇を合わせる。一度合わせると歯止めが効かなくなって何度も繰り返した。触れたあった体から合わさる体温が熱く混ざり合う。
「……好きだ……」
思わず耳元に甘ったるい響きを溶かし入れる。
「俺も……」
間髪入れずに帰ってきた答えはやっぱり甘くて、背筋がぞくりと震えた。
俺たちだけのものだ。
互いへの気持ちも、触れ合いも、誰も知らなくていい。