起床と共に視界に入った自分の身体に沸き立った感情は筆舌に尽くし難く、私にはこれが喜びとはいえなかったし、かといって落胆だなんて簡単な言葉で片付けられる代物でもなかった。
駆け込んだレストルームの古びた鏡には、一人の男が映っている。少々面長で赤毛の男だ。その額には、人体が本来持ち得ないだろう緑色の鱗がこびり付いている。その鱗は額のみならず、鏡に映る範囲だけでも首から鎖骨、肩を覆うように点々と皮膚に根付いているようであった。
鏡の中の男は、私が自らの頬に手を伸ばすと同じように手を伸ばした。
その姿は、昨晩まで私が見ていた大きなトカゲ男ではなく、それ以前の私自身であった。
――原因不明の不具合。復旧時期は未定。
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